#122 ツキと市場へ
ツキがパーティーハウスにやってきた次の日の早朝。
カスミはツキとフィオと朝市に向かっていた。
「このくらいの時間は涼しいねぇ」
「そうですね」
まだ日が昇り切っていないくらいの早朝なので、日中に比べるとかなり涼しく、ツキも快適そうだった。
「そんな暑そうなもふもふ付けてるから〜……」
「このもふもふは妾のチャーミングポイントなんや。 ……まぁ、暑いところに行く時は不便やけども」
「獣人国はこの時期寒いんですか?」
「獣人国は他の国に比べると一年中寒いで〜。 この時期は気温がギリギリ2桁あるから、まだマシな方やけど」
「そんなにですか」
それからさらに話を聞くと、獣人国はこの国のほぼ正反対の位置にあるそうで、寒気と極寒期と呼ばれる季節が半年毎に交互にやってくるそうだ。
極寒期ともなると、日中でも気温はマイナス圏に突入するらしく、雪もかなり積もるのだとか。
ただ、それは獣人国でも一番寒さが厳しい地域の話で、寒さが比較的マシな地域もあるとのこと。
「だからこっちとは流通してる食材とか結構違うなー」
それから市場に辿り着くと、ツキが並んでいる出店の商品を見てそんな風に口にした。
「そのうち獣人さんの国にも行ってみたいですね」
「お、歓迎するで〜。 妾が案内したるよ」
「ツキは方向音痴だから、案内とかできないでしょ〜……」
「そ、そんなことないわ! ……多分」
そんな若干の不安を感じさせるツキに苦笑しつつ、カスミは市場で色々と食材を買い足していった。
この市場においてカスミは大量に食材を買ってくれる太客なので、そこかしこで声をかけられたり、商品を買うとおまけが貰えたりと、色んな人に可愛がられた。
「カスミは人気者やねぇ」
「あはは…… ありがたいです」
「にしても、フィオが普通にこんな朝早くに起きて買い物に付き合うなんてなぁ。 妾が最後に会った時は戦場でもぐーたらしとったのに」
「凄い眠いけど、程よく動くとご飯が美味しいし、よく眠れることに気付いた〜……」
「おお、なんかまともなこと言っとるなぁ。 それで言ったら他の面々も前会った時より穏やかになっとったな」
「カスミちゃんのおかげ〜……」
フィオはそう言いながら、カスミの方に身を寄せて腕を組んできた。
「仲良えなぁ。 妾も気の許せる仲間が欲しくなってまう」
「ビフレストに入るのは無理だけど、別に遊びに来たりするのはいいんじゃない〜……? 割と暇でしょ〜……?」
「言ってくれるやんか。 ま、確かに滅多に依頼なんて来んからな」
「欲しかったら後で魔札にパーティーハウスに跳べる転移魔法刻んであげようか〜……?」
「めちゃくちゃ欲しいわそれ」
「魔札ってなんですか?」
ツキとフィオの会話の中で、なにやら気になるワードが出てきたので、カスミはそう聞いてみた。
「魔札っちゅうのは妾の武器みたいなもんやね。 魔法をあらかじめ封じたお札に魔力を通して、魔法を起動させることができる道具や」
「へぇ、便利そうですね」
「意外とそうでもない〜…… 魔札に魔法を刻むのは、その魔法の構築を理解してないとできないし、起動させるのにも普通に同じ魔法使うのより魔力が必要〜…… まともに武器として使ってるのはツキくらい〜……」
「別に弱い魔物なら剣使って倒すしなぁ」
どこかほんわかしているツキだが、魔法の知識や剣の腕は相当なもののようだ。
「そういえば聞きそびれてましたましたけど、ツキさんもSランク冒険者なんでしょうか?」
「せやでー」
「やっぱりそうでしたか」
「もう一人の獣人の方は元気〜……?」
「元気も元気やで。 今頃国の闘技場か魔物と戦っとるんやない?」
ツキもカスミの予想通りSランク冒険者で、どうやらもう一人獣人のSランク冒険者がいるらしい。
「もう一人の方はどんな方なんですか?」
「戦闘バカやね」
「脳筋〜……」
「あ、あれ?」
Sランク冒険者なんだからやっぱり凄い人なのかなと思って、カスミはもう一人の獣人のSランク冒険者について聞いてみたのだが、ツキとフィオからはなんだか辛辣な言葉が返ってきた。
「戦うこととその後の宴のことしか頭にない奴やねー」
「アネッタとよく模擬戦してる〜…… 前回から割と時間空いたから、もしかしたらそろそろ戦いに来たりするかも〜……?」
「そ、そうなんですね」
とりあえず戦うのが好きな人だという前情報は得られたので、会う時はとりあえず戦えないことをアピールしようと心の中で決意するカスミだった。
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