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#119 狐さんとの出会い

 ある日のこと。


 カスミはガリュウと共に街中を散歩していた。


 他のビフレストの面々はいないが、鼻が効くし実力も申し分ないガリュウはボディガードとしては超優秀なので、ガリュウが来てからは今のようにガリュウと2人で散歩したり市場で買い物をしたりということが結構ある。



「クルルー♪」



 ガリュウもこうして散歩したりするのは楽しいようで、日頃の運動も兼ねて最近はほぼ毎日ガリュウと共に散歩してるカスミだった。



「クル?」


「あら、どうしました?」



 そんな中、おもむろにガリュウが首を伸ばして辺りをキョロキョロし始めた。


 今は街の公園にカスミ達はおり、カスミもガリュウの真似をするように辺りを見渡してみたが、周りに人はほとんどいなさそうだった。


 しかし、少ししたタイミングで、少し離れた場所の曲がり角に、人影のようなものが見えた。



「クル……」


「ガリュウさん?」



 すると、ガリュウはその人影とカスミの間にスッと体を入れ、カスミを守るような素振りを見せた。


 ただ、その表情は割といつも通りで、一応警戒しておこうという感じのようだ。


 カスミがそんなガリュウの行動に首を傾げていると、その人影が曲がり角から出てきた。



 ――スッ…… バタっ……



「えっ?」


「クル?」



 ……かと思えば、その人影はパタリと力無く地面に倒れ伏し、そのまま動かなくなった。



「ちょちょっ、大丈夫ですかっ」



 カスミが慌ててその倒れた者に駆け寄ると、その人物にはもふもふとした狐のような耳と尻尾が生えており、ちょっとカジュアルにした着物のような形と素材の服を身につけていた。



「うーん……」


「えっと、聞こえますかー?」


「みずぅ……」


「水……? と、とりあえずガリュウさん。 この方を仰向けにしてもらえますか?」


「クルゥ」



 顔色なども見たかったので、カスミはガリュウにお願いして目の前の人物を仰向けにしてもらった。


 すると、綺麗な顔立ちと立派な胸部の膨らみが露わになり、とりあえず目の前の人物が女性であることが分かった。



「顔が赤い…… とりあえず、お水出しますね」



 先程小さな声で水を求めていたその女性に、カスミは収納ポーチからコップを取り出し、水魔法でそのコップの中に水を出現させて差し出していった。



「お姉さん、飲めますか?」


「ああ、おおきに…… んく…… んく……」



 どうやら辛うじて体は動かせるようで、その女性は少し体を起こしながらコップを受け取り、こくこくとしっかりコップの中身を全て飲み干していった。



「ぷはー、生き返ったわぁ…… ありがとね、お嬢ちゃん」


「いえいえ。 あそこにベンチあるんですけど、立てますか? 」


「ちょっとふらつくけど、いけるよぉ」

 


 とりあえずカスミは、その女性と一緒に近くのベンチに移動した。



「いやはや、改めてありがとねお嬢ちゃん。 この辺りがこんなに暑いなんて知らなくて、持ってきた分の水も全部飲んでしもたんよ」


「そうなんですね」


「お嬢ちゃんみたいに魔法使えればいいんやけど、妾、魔法が使えない体質なんよー」


「そういう人もいるんですね」



 魔法は魔力がある者なら練習すれば大なり小なり使えるようになると聞いていたが、中には魔力があっても使えない人はいるらしい。



「代わりに道具を使って戦うんやけど、昨日の依頼で使い切ってもうてな」


「依頼…… 冒険者さんなんですか?」


「そうやで。 あ、自己紹介がまだやったね。 妾はツキっていうんや。 よろしゅうね」


「カスミっていいます。 こちらは従魔…… というよりはお友達のガリュウさんです」


「クルルー♪」


「せや、先程から気になっとったんやけど、この子小さいけどドラゴンよね?」



 これまでガリュウの正体を一発で見抜いた者はいなかったのだが、ツキはガリュウがドラゴンであることを確信しているようだった。

 


「えっ…… 分かるんですか?」


「まぁ、普通の人ならこんな小さくて可愛いドラゴンいるわけないと思うやろうな。 多分、何かしらの力で小さくなっとるんやろ?」


「そこまで…… よく分かりますね?」


「実際ドラゴンと対峙したことある者ならなんとなく分かるかもしれんね」


「つまり、ツキさんもあるんですね?」


「ふふ、こう見えて妾は強いんよー。 ……暑さには弱いんやけどね」



 先程ガリュウがツキを少し警戒するような素振りを見せたのは、自分と同レベルに強い者の気配を感じたからかもしれないなと、ツキの話を聞いたカスミは推察した。



「ところでツキさんはこんなところで何をしてたんですか?」


「この街の知り合いのとこ行こうとしててな? さっき通りすがりの人に聞いたら、西区のところに住んでる人じゃないかって言われたんやけど、全然それっぽい家がなくてねー」


「えっと、ここ東区ですね」


「えー? そうなんー?」



 どうやらツキはドラゴンと対峙できる強者ではあるようだが、水を切らして倒れたり、方向音痴だったりと、おっちょこちょいな側面があるようだ。



「良ければ案内しましょうか?」


「ええのん?」


「はい。 大体この街のどこになにがあるかくらいは分かるので。 ちなみに知り合いはどんな方ですか?」


「ありがたいわ〜。 知り合いはな、個人ってわけじゃなくて…… ビフレストっちゅう冒険者パーティーなんやけど、知っとる?」



 ツキの探していた知り合いは、カスミにとっては聞き覚えがありすぎる名前だった。

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