#118 背徳のポテトチップス
「今日はごろごろの日〜……」
現在、カスミはリビングのソファでフィオに抱き枕にされていた。
というのも、今日は定期的に訪れるカスミを強制的に休ませる日なのだ。
先日、ミーユイアがこのパーティーハウスにやってきた時、ミシュテとカノムという弟子を受け入れることを決めたり、商業ギルドやデラフト商会、あとアルデンテなんかとの商談も定期的に行っているカスミだが、活動量が増えるのに比例して、今日のような強制おやすみ日も少し増やされていた。
こればっかりはカスミがなんと言おうがビフレストの面々は取り合ってくれないので、甘んじて受け入れている。
以前、前世では週に5.5日朝から晩まで働いていたから大丈夫と言ったこともあるのだが、それは異常だと言われ、逆にその常識を忘れさせようと、おやすみ日が増えてしまったこともあったり。
やはり日本人の労働基準は、世界を超えてもおかしいと言われてしまうようだ。
ちなみにこちらの世界では、朝から働いたら大体遅くとも夕方くらいには仕事を終えるそうだ。
そもそも、地球ほど夜まで店が空いていることが無いというのも理由の一つであり、大半の人間が夜の22時にもなると眠りにつくという、なんとも健康的な生活環境がこちらの世界の人間には染み付いているのだ。
「ん〜、抱き心地がよき〜……」
「あっ、フィオさんちょっといいですか?」
「ん〜……?」
「ちょっと作ろうと思ってたものがあって」
「今日はおやすみの日だよ〜……?」
「そ、そうなんですけど、よりよい休息のために必要なんですっ。 下準備はできてるので、すぐ作れますからっ」
「ん〜…… ならいいでしょう〜……」
なんとかフィオを説得することができ、体を離してもらったカスミは、キッチンに向かって収納ポーチからあるものを取り出した。
「なにそれ〜……?」
「じゃがいもを薄切りしたものですね」
それはボウルの中で水にさらされた薄切りじゃがいもで、ちょっと前にスライサーをスキルで生み出した時に、お試しで作ったものだ。
そんな薄切りじゃがいもをキッチンペーパーの上に並べ、その上からもキッチンペーパーを被せてしっかり水気を取っていく。
それが済んだら少し乾かすのだが、それはフィオが物を乾かす魔法を使って、ちょうどいい塩梅にしてくれた。
そんなじゃがいもを、カスミは油を注いで温めた鍋に入れて揚げ始めた。
「これ食べるの〜……?」
「そうですよ。 ポテトチップスって言うんです」
そう、カスミが今作っているのは、地球では大人気のお菓子であるポテトチップスだった。
「美味しい〜……?」
「意外と美味しいんですよ」
カスミは美味しさを知っているから自信を持って作っているが、ポテトチップスを知らないフィオからすると、あんまり美味しくなる想像がつかなかった。
「よし、これで油を切って…… 塩を振って完成です」
それから程なくしてポテトチップスが綺麗な狐色になったので、バットに上げて油を切り、綺麗なボウルに入れて塩を振って、ボウルを上下に動かして塩を全体に馴染ませたら完成だ。
早速それをリビングのテーブルに運び、フィオと一緒に口に運んでみた。
「ん、凄いパリパリ〜……! 美味しい〜……!」
「良い感じですね」
すると、口の中にパリパリとした食感と、じゃがいも本来の仄かな甘みと塩気が混ざり合い、どんどん次が欲しくなるような美味しさと食べやすさがそこにはあった。
「作るの簡単なのにこんな美味しいんだね〜……」
「料理って不思議ですよね」
水にさらしたり乾かしたりする作業を除けば、5分とかからず出来上がったポテトチップスの美味しさに、フィオはとても感心していた。
「無限に食べたくなっちゃう〜……」
「唯一の欠点として、カロリーが高いんですよね。 なので、食べ過ぎは体に良くないです」
「そう言われると確かに体に悪そうな味はしてるね〜……」
とても食べやすく、この世界でも確実に人気が出るであろうポテトチップスだが、売るにあたって食べ過ぎ注意の喚起はした方がいいと思うので、今度商業ギルドに登録しに行くときに、レシピの片隅に書いておこうと密かに思うカスミだった。
「ふぅ〜…… 小腹も満ちていい気分〜…… カスミちゃん、お昼寝しよ〜……?」
「うーん、ポテトチップス食べた後にごろごろするのは背徳感がすごいですねぇ……」
そうしてポテトチップスを食べた後は、フィオと一緒に昼寝をし、ちょっと罪悪感を抱えながらも、だらけきった時間を過ごすカスミなのであった。
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