#113 弟子
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「弟子、ですか?」
予想していなかった要望をミシュテとカノムから伝えられたカスミは、詳しい話を聞くべくそう聞き返した。
「はい。 私とカノムはカスミ様の料理…… 特にスイーツ作りの腕に魅入られました。 以前ミーユイア王女殿下の誕生日パーティーで出されたケーキやスイーツ、そして今回のモンブランのようなものを私も作れるようになりたいのです。 それで私が味わった感動を、もっと多くの人に知ってもらいたい」
「なるほど…… カノムさんも同じような理由ですか?」
「そっすね! 付け加えるなら、自分の周りは女性が多いんす。 家族だけでも母、妹が3人と姉が1人、ありがたいことに交際してる女性もいて、皆んな甘いものには目が無いんす」
「ふむふむ」
「それで、ミーユイア王女殿下の誕生日パーティーの時に、カスミ様のデザート作りを手伝わせてもらった後、見よう見まねで自分で作ってみて、家族や彼女に食べてもらったらそれはもう喜んでもらえたんすよ。 でも、自分で食べてみたら味見させてもらったカスミ様のスイーツには遠く及ばなくて。 だから、ちゃんとしたものを作れるようになって、家族や彼女、他にも甘いものが好きな人を沢山喜ばせたいなって思ったんす!」
「素敵な理由ですね」
ミシュテもカノムも、かつてのケーキに魅入られたカスミのようにスイーツに魅入られ、その素晴らしさをより多くの人に伝えたいという強い熱意と願望を持っていることがカスミに伝わってきた。
「ですが、スイーツ作りは思ってる以上に奥深いです。 もしかしたら身に付けるにはかなりの時間がかかるかもしれません。 それでもやりますか?」
「ここに来させていただいた時から、覚悟は決まっています」
「自分もミシュテも、弟子入りを認めてもらったら王城の料理人は辞めるつもりです!」
「そ、そんなにですか」
カスミが思ってた以上にミシュテもカノムも覚悟を決めてきていたようだ。
「えっと、ユイ様的には良いんでしょうか?」
「もちろんよ。 進退を決めるのはあくまで個人の自由だから。 王城の料理人の待遇に不満があって辞めるとかだと考えないといけないけど」
「め、滅相もございませんっ。 王城の料理人の待遇は私には勿体無いほどです」
「下積み時代は大変だったっすけど、おかげさまでカスミ様と出会えた訳ですし、感謝しかないっす!」
「ふふ、それなら良かった」
ミーユイア的にもミシュテとカノムの夢はとても良いものに映ったようで、進退に関して口を出したりはしてこなかった。
「それに、2人が成長して店なんかを出してくれれば、カスミのデザートがいつでも食べられるようになるじゃない? もちろん、他の王城の料理人達にも、スイーツ作りの腕を磨いてもらうつもりだけれど」
「店、ですか……」
以前クリスタにチラッと話したこともあったが、カスミもいつかこの世界で店を出したいと思っており、今回の話はカスミにとっても実はありがたい話かもしれない。
「……分かりました。 ミシュテさん、カノムさん、お二人に私の持てる限りの技術をこれから教えましょう」
「ありがとうございます!」
「おおっ! 自分、頑張らせてもらうっす!」
そうして正式にカスミの弟子になることが決まったミシュテとカノムは、近日中に仕事の引き継ぎや身辺整理をして、来月くらいにはこの街に移住してくることになった。
「カスミの弟子なんて、世界で一番恵まれた立場かもしれないわね?」
「そ、そうですかね?」
「ええ。 もしカスミに余裕があるなら、他の王城の料理人達にもスイーツ作りを教えて欲しいわ」
「構いませんよ。 転移陣のおかげで王都にはすぐ行けますし。 ……あ、でも、クリスタさん達とも相談ですね」
「ええ、私もカスミに無理はして欲しくないから、無理なら無理で全然構わないわ」
カスミ的には現状の生活だと楽過ぎると思ってるくらいだが、クリスタを始めとしたビフレストの面々は、カスミをこれ以上働かせたくないと思っているので、その辺りの考えの相違も踏まえて色々と相談するべきだろう。
「それじゃあ、話も一段落したようだし、またトランプしない?」
「ふふ、いいですよ」
ひとまず弟子入りの件について現状話せることはもうないので、真面目な話は一旦切り上げて再びトランプで遊び始めるカスミ達であった。
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