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#112 遅めのデザート

 ガリュウとミーユイアの邂逅から少し時は経ち、今はカスミが用意したトランプで遊び始めようとしたところだった。


 一応非売品なので、まだ秘密にしておいてということは伝えておき、まずはババ抜きのルールを説明して、カスミとミーユイア、あとミシュテとカノム、ミーユイア付きのメイドも一緒にやることになった。



「隣の人のカードを引けばいいのね?」


「そうです」



 トランプは当然初めて触るミーユイア達だったが、ババ抜きは非常に簡単なルールなので、皆すぐにやり方は覚えてくれた。



「クルルー」


「ふふ、ありがとうございます、ガリュウさん」



 そんな中、カスミは混ざりたそうにウズウズしていたガリュウに、隣のミーユイアの手札から一枚選んで持ってきて欲しいと伝えたところ、口で咥えてパクッとトランプカードを咥えて持ってきてくれた。


 ちなみにガリュウは賢いので、涎をつけたりしないようにちゃんと気を遣ってくれている。


 自分の持ってきたカードがカスミの手札で揃ったのを見て、尻尾をブンブンさせて喜んでいるのがまた非常に可愛らしい。



「あと一枚ですわ!」


「ふふ、意外とそこからが長いですよ」



 それから全員が順調に手札を減らしていき、いち早く手札が残り一枚になったミーユイアだったが、そうなると当たりの確率も低くなるのでしばらく上がれず、結局カノムに逆転されて2位で終わった。



「惜しかったですの……」


「こればかりは運ですからね」



 そしてその次にはメイドの人があがり、残すはカスミとミシュテのみとなり、カスミが引く番がきた。


 手札はカスミが一枚、ミシュテが二枚なので、ここで当たりを引けばカスミの勝ちなのだが……



「クル?」


「あっ……」



 ガリュウが悩みながら右のカードをパクッと咥えると、ミシュテはシュンとした表情になった。


 それを見たガリュウが試しに左のカードをパクッと咥えると、パァッと表情を綻ばせた。



(わ、分かりやすい……!)



 どうやらミシュテはクールな外見と言動とは裏腹に、ローニャのように腹芸ができないタイプなようだ。



「クル……」


「あぁっ……」



 あまりにも分かりやすくて、若干罪悪感を感じながらガリュウは右側のカードを咥えてカスミのところに持ってきた。


 そのカードは案の定ジョーカーではなく、カスミが4位、ミシュテが5位という結果に終わった。



「負けてしまいました……」


「ミシュテ、分かりやすいっすねー」


「えっ?」


「全部顔に出てたっすよ」


「そ、そんなっ……」



 どうやら本人には自覚がなかったようで、同僚であるカノムに指摘されてちょっとショックを受けていた。


 意外と可愛いところもあるんだなーと、カスミはそんなミシュテを見てほっこりとした気持ちになりつつ、またカードをシャッフルして二回戦を始めていった。


 ちなみにその後も、最後の2人にミシュテが残った時は、必ずミシュテは最下位で終わっていた。




 *




 ババ抜きや神経衰弱など、トランプで遊びまくっていたらいつの間にか時間は経ち、15時くらいになった。



「そうしたら、取っておいたデザート食べましょうか」


「そうね! お腹もいい感じに落ち着いてきたわ」



 実は昼食の際に、カスミはデザートも用意していたのだが、あまりのメイン料理の美味しさからか、ミーユイアを始めとして数名がお腹いっぱいになってしまったので、デザートは後回しにしていたのだ。


 なので、丁度カスミ的にはおやつの時間でもあるし、満腹だったメンバーも時間が経ったことでお腹に空きができてきたということで、取っておいたデザートを食べることにした。


 先程庭でアネッタと模擬戦していた女性騎士2人も戻ってきたので、その2人分も併せて用意していく。


 ちなみにアネッタに相当絞られたのか、帰ってきてしばらくはソファでぐったりしていた。


 ただ、アネッタ曰く、王女の護衛を務めるだけあって護衛騎士の2人はかなり強く、いい訓練になったとのこと。


 そんな2人相手に息も切らせず圧勝してしまう辺り、アネッタの強さはやはり規格外と言えるだろう。


 それはさておき、キッチンに移動したカスミは、冷蔵庫から人数分のデザートを取り出し、テーブルに運んでいった。



「こちらになります」


「まぁ、なんだか可愛らしい見た目ね」


「モンブランというケーキになります」



 今回カスミが用意したのは、細いクリームが渦状のそうになっているモンブランだった。


 先日市場で何か掘り出し物がないか見て回っていた時に、全く売れていない栗をとある出店で見かけ、沢山買わせてもらった。


 どうやら栗は食べるために剥いたり茹でたりする手間がかかることからこの世界では不人気食材らしいが、カスミからすれば色んな料理、スイーツに使える食材だ。


 いま目の前にあるモンブランも、栗を買った時から作ろうと思っていたものの一つだったりする。



「カスミ、食べてもいい?」


「もちろんです」



 見た目の可愛らしさをある程度楽しんだミーユイアは、フォークを手に取って、モンブランを切り崩して口に運んでいった。



「あむ…… ん〜っ♡! 美味しいっ♡! 外側のクリームと内側のクリームに下のサクサクとした生地がマッチしてて最高……♡」



 ミーユイアの住む王城でも、以前に比べたら遥かに美味しいスイーツが食べられるようになったが、やはりカスミの作るスイーツは別格なようだ。



「濃厚な甘み…… ですが全然くどくなくて、どんどん次が欲しくなってしまいますね……♡」


「この生地の焼き加減も最高っす! 綺麗にクリームが巻かれてるのも凄いっすね!」



 幸せそうなミーユイアの横では、料理人であるミシュテとカノムも感動の面持ちで、モンブランをゆっくり味わって食べていた。


 さらに、メイドと護衛騎士の2人も、女性なだけあって甘いものには目がないようで、初めて食べるカスミのスイーツに目を輝かせていた。



「あ、中から何か出てきたわ」


「それが栗の身ですね。 外側のクリームはその身をペースト状にして作ってるんです」


「そうなのね。 ……うん、これも美味しいわ♡」



 クリームを安定して巻くために支えとして中に入っている栗の身も、当然美味しく食べられるように甘めに煮てあるので、栗の身と一緒にクリームや生地を食べるとまた新たな美味しさが口の中に広がっていった。


 そんな美味しいモンブランは、いくらゆっくり味わってもいつかは無くなってしまうもので、その後にカスミが用意したスッキリとした味わいの紅茶を飲むと、なんだかもう言葉では言い表せない幸福感が全身に広がっていった。



「はぁ、美味しかった……♡ やっぱりカスミのスイーツは格別ね」


「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいです」


「これがいつでも食べられたら良いのだけれど」


「そうできるためにも色々頑張りたいですね」


「あの、カスミ様、よろしいですか?」



 カスミとミーユイアがそんな風に話していると、ミシュテが恐縮した面持ちで声をかけてきた。



「どうしましたか?」


「今ミーユイア王女殿下とお話していたことにも通ずるのですが、私とカノムをカスミ様の弟子にしていただけませんか」


「お願いしますっす!」



 ミシュテの言葉に続くような形で、カノムもカスミに頭を下げてそんな要望を伝えてきたのであった。

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