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#109 親友との再会

「クルルー」



 ある日、カスミがパーティーハウスの掃除をしていると、パタパタ翼をはためかせながらガリュウが飛んできて、その口には綺麗な便箋が咥えられていた。



「あら、ありがとうございます、ガリュウさん」


「クルー♪」



 どうやらカスミ宛の便箋のようだが、カスミに手紙を送ってこれるのは、リビングの目立つ場所に飾るような形で置かれているレターポータルの持ち主しかいないので、ある程度送り主の想像は付いていた。


 とりあえず、カスミは今やっている掃除をパパッと終わらせ、リビングでその便箋を開いてみた。


 すると、綺麗ではあるが、まだ少しだけ拙さを感じさせる文体で書かれた手紙が数枚入っており、手紙の末尾にはこの国の第二王女であるミーユイアの名前が差出人として書かれていた。


 そんなミーユイアの手紙には、日々の習い事の進捗だったり、王城での出来事なんかが沢山書かれていて、丁寧な文体ながらも元気でやってることが伝わってくる内容に、カスミは思わず読んでいて笑顔になってしまう。


 そして、手紙の最後の方には、空いている日付がいくつか書かれており、最後には再会を待ち望んでいるという内容で締め括られていた。


 というのも、こうして手紙のやり取りをするのは初めてではなく、大体一週間〜二週間くらいの頻度でカスミとミーユイアは手紙のやり取りをしている。


 カスミもカスミで、最近の出来事や、前回の手紙のやり取りでは、ハンソンの街に行くことなんかも書いたりしていたのだが、ミーユイアの手紙には毎度再会を待ち望んでいるという内容がどこかには書かれていた。


 なので、カスミも会いたいと返したところ、ミーユイアがこちらに遊びに来るという話になったのだ。


 正式な場とかではなく、完全にプライベートでお忍びで遊びに来る形だが、それ自体は別に珍しいことではないそうだ。


 王や王妃、他の王子王女もいくら身分が高かろうとも1人の人間なので、執務や習い事の合間に休息としてどこかへお忍びで出かけるというのは、人として必要なことなのだろう。


 何はともあれ、ミーユイアが予定を送ってくれたので、早速カスミは他のビフレストのメンバー達にどの日なら良いか確認を取った。


 結果、少し急だが5日後なら一番都合が良さそうだという話になり、その旨とハンソンの街であったことを手紙にしたためて、レターポータルでミーユイアに送った。


 すると、すぐに5日後で問題ない、凄く楽しみだという内容の手紙が返ってきた。


 なお、本来であればミーユイアのいる王都からカスミのいるサミアンの街に行くには、馬車で一週間近くはかかる。


 だが、以前カスミ達が王都に滞在した際に住んでいた王都の家に、フィオが転移陣という2点を一瞬で移動することができるものを置いてくれているので、ミーユイアもそれでこちらに来てもらうことにした。


 そうすれば移動も一瞬だし、何より道中の危険もないので、護衛の心配がかなり減る。


 まぁ、流石に王族に誰も付けずに出かけさせるわけにもいかないので、数名の護衛は連れてくるそうだが。



「そうと決まれば準備しないとっ」


「ふふ、そうだな」



 そう言って気合を入れているカスミを、クリスタは微笑ましそうに見ていた。


 それからカスミは、再会を楽しみにしてくれているミーユイアのために、どうおもてなしするかを考えるのであった。




 *




 あれよあれよと時は経ち、ミーユイアがパーティーハウスにやって来る日になった。


 なので、カスミは待ち合わせ場所である王都の家に転移陣を使ってやって来ていた。


 ちなみに久しぶりにこの家に来た訳だが、定期的に商業ギルドの者が掃除に来ているらしく、どこも綺麗な状態に保たれていた。



「お姫様が家に来るって現実味がないにゃー」


「まぁ、確かにそうですね」



 そして、カスミの付き添いとしてローニャも一緒に来ているのだが、ローニャの言う通り、これから家にお姫様であるミーユイアが来るというのは、ここまで来てもあんまり実感がなかった。


 カスミもそうだし、ビフレストの面々も全員平民かちょっと裕福な家育ちといった感じなので、王族はどこか遠い世界の存在であり、自分の住む家に来るような存在じゃないという先入観がどうしてもあるのだ。


 しかし、そんなカスミとローニャの内心とは裏腹に、家の前に何かが止まった気配がしたかと思うと、玄関先の呼び鈴が鳴らされた。


 それを受けてカスミが玄関から外に出ると、ちょうど馬車からミーユイアが降りてくるところだった。



「あっ、カスミっ!」


「わっぷ!」



 すると、馬車から降りてきたミーユイアは、カスミに気付くや否や駆け寄ってきて、カスミはそのままぎゅーっと強めに抱きしめられた。



「会いたかったわ!」


「わ、私もです、ユイ様」



 今日も今日とて可愛らしい顔を花が咲いたかのように綻ばせながら、カスミにぎゅうぎゅう抱きついてくるミーユイアを、カスミはあっぷあっぷしながらなんとか受け止め、軽くだが自分からもミーユイアにハグを返していった。



「ずっと楽しみにしてたの! 予定が決まる前からずっと!」


「お待たせしちゃいましたかね?」


「そんなこと…… いや、あるわ。 一日でも早く、カスミに会いたかったの」


(ぐはっ…… か、可愛いぃ……!)



 相変わらずの無自覚であざとい言動に、カスミは久しぶりにノックアウトされた。



「んーっ、カスミはやっぱり可愛いわ♡」


「ゆ、ユイ様の方がお可愛らしいですよ」


「ふふ、ありがとう♡」


「そ、それじゃあ、立ち話もなんですからどうぞ中へ」


「そうね! ……あ、でもその前に、付き添いの面々を紹介するわ」



 カスミに会えた喜びで忘れていた付き添いの者達の紹介をミーユイアは始めた。


 その内訳は、護衛の女性騎士が2人と傍付きのメイドが1人、それに加えて、カスミも知っている者があと2人ほどいた。



「カスミ様、お久しぶりです」


「また会えて光栄っす!」


「あっ、確か、ミシュテさんとカノムさん、でしたか」



 その2人というのは、ミーユイアの誕生日パーティーの際に知り合った王城の料理人の内の2人で、若くて凄く熱心にカスミに教えを乞うてきたりしてくれていたこともあり、カスミはその2人の名前を覚えていた。


 真面目でキリッとした風貌の女性がミシュテで、元気で常にハイテンションな男性がカノムだ。



「このお二人はどうやらカスミに用があるらしくて、付き添いとして一緒に来たの」


「私に用ですか?」


「確かにそうですが、私達の用はいつでもお話できるようなことですので、カスミ様とミーユイア王女殿下の時間を優先なさってください」


「帰り際とかにお話させてくださいっす!」


「分かりました。 じゃあ、どうぞ中に」



 とりあえず今はカスミとミーユイアの時間を優先して欲しいとのことだったので、ひとまず全員家の中に入ってもらい、そこから転移陣を使って、サミアンの街のパーティーハウスへ一同移動するのであった。


 

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