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#101 マリンフェアリー保護活動

 マリンフェアリーにご飯をあげるべく、カスミは一度荷物を置いているスペースに戻り、食べ物が入っている自分の収納ポーチを手に取った。



「カスミ、そんなに慌ててどうした?」


「あっ、クリスタさんっ」



 すると、ちょうど海から戻ってきたクリスタがカスミに声をかけてきた。



「えっと、実は魔物の子供が迷い込んじゃったみたいで、お腹が空いて弱ってたのでご飯をあげようかと……」


「なに? ……危ないんじゃないか?」



 過保護なクリスタなので、カスミが魔物と接触したという話を聞いて、少し渋い表情を浮かべてそんな風に言ってくる。



「マリンフェアリーっていう魔物で、レネさんとマリンさん曰く危険はないって言われました」


「ふむ…… 確かにマリンフェアリーは攻撃性は無いが……」


「と、とりあえず戻りますねっ」


「あ、カスミっ。 全く…… 私もついていくからな」



 このままクリスタと話していても、ずっと渋い顔をされるだろうなと判断したカスミは、内心謝りつつマリンフェアリーのいるところに収納ポーチを持って駆け出した。


 クリスタもそんなカスミを仕方なさそうに苦笑いを浮かべつつも追いかけていった。



「はぁ、はぁ、持ってきましたっ」


「おかえりカスミちゃん。 あれ、クリスタも来たの?」


「魔物と遭遇したと聞いたらな。 ……確かにこいつはマリンフェアリーだな」


「キュゥ……」



 それからカスミとクリスタがマリンフェアリーの下に辿り着くと、依然マリンフェアリーはぐったりしてしまっていた。



「えっと、マリンフェアリーさんって何食べるんですかねっ?」


「人間を襲わないから、肉食ってわけでは無いのかな?」


「やっぱり海に住んでますから、海藻や貝などでしょうか?」



 カスミの問いかけにレネとマリンがそんな風に答える。


 それを受けたカスミは、収納ポーチからバーベキューのために仕込んだホタテの剥き身と生わかめを取り出した。



「マリンフェアリーさん、これどうぞっ」


「キュ……?」



 それらをカスミがマリンフェアリーの口元に置くと、マリンフェアリーはしんどそうに顔を上げた。



「キュゥ……!」



 すると、目の前に置かれたホタテや生わかめを確認するや否や、それらに齧り付いていった。


 どうやらホタテや生わかめは餌として当たりの食べ物だったようだ。



「おー、食べてる食べてる!」


「良かったですっ」



 ひとまず用意した食べ物を食べてくれたことに、レネとカスミは安堵の声を漏らした。



「それにしても、深海に住むマリンフェアリーがどうしてこんなところにいるんでしょう?」


「もしかしたら、先日の私達の戦いが原因かもな」



 マリンの呟きに、クリスタがそう答えた。



「最後に戦った巨大な魔物…… キメラクラーケンと名称されたんだったか? ……あいつは深海から現れたようだし、戦いの余波で海もかなり荒れたから、どこかのタイミングでマリンフェアリーが移動せざるを得なくなって、親とはぐれてここに迷い込んだのかもな」


「なるほど…… でも、沖合の方に魔物避けの網があるはずなんですけどね?」


「それももしかしたら、先日の戦いでどこかに穴が空いたりしてるのかもしれないな。 それか高波に攫われて網を上から超えたとか」



 マリンフェアリーが迷い込んでしまった理由を、クリスタはそう予想した。



「キュウキュウ!」



 そんなことを話していると、カスミが用意した食材を食べ終えたマリンフェアリーが、腹部から左右に伸びたヒレをパタパタさせながら元気に鳴き声を上げた。



「あっ、元気になりましたか?」


「キュウ!」


「ふふ、それは良かったです」



 可愛らしく返事をするマリンフェアリーに、カスミはとても温かい気持ちになった。



「そうしたら、網の外まで送らないとな」


「そうですね」



 マリンフェアリーにちょっと愛着が湧いてしまったカスミは、別れるのを寂しく思いつつも、クリスタの言葉に賛同した。



「でも、この子一匹でお家まで帰れますかね?」


「うーん、確かにな。 ……よし、それじゃあ、海の中でも呼吸ができる魔法を使って、私が沖の方までこいつに付いていこう。 深海の入口まで守りながら送れば、こいつだけでもなんとかなるだろつ」


「わぁ、ありがとうございます、クリスタさん!」



 ということで、マリンフェアリーのことはクリスタが安全に沖まで送ることになった。



「あ、クリスタさん。 その魔法って私にも使えますか?」


「使えるが…… 付いてくるのはダメだぞ?」


「網のところまででもダメですか……?」


「うーん…… まぁ、そこまでならいいか。 そうしたら、レネもマリンも付いてきてくれ。 レネは帰り道のカスミの護衛と、マリンはもし何かあった場合、カスミを背負ってすぐ泳いで逃げてくれ」


「分かった!」


「承知しました」



 元々カスミを連れて海の中でも呼吸ができる魔法を使って遊泳しようと思っていたクリスタだったので、魔物避けの網のところまでマリンフェアリーを送ることは許可してくれた。


 ちなみにその方針をガリュウがマリンフェアリーに翻訳して伝えたところ、マリンフェアリーもどうやら理解してくれたようだ。


 なので、カスミ達はマリンフェアリーと共に海に入っていった。



「よし、魔法かけるぞ」



 それから腰くらいまで海に浸かったところで、クリスタがエアヴェールという魔法をかけてくれた。


 すると、カスミ達それぞれを包むように空気の層が出来上がり、水がその層より先に入ってこなくなった。


 そして、そのまま頭まで海に入っていくと、そこには綺麗な海の姿が広がっていた。



「わぁ、凄いですっ」


(カスミ、聞こえるか?)



 カスミがその光景に思わず感嘆の声を漏らしていると、頭の中にクリスタの声が響いてきた。



(これは念話の魔法だ。 カスミとも繋げたから、頭の中で話したいこと念じれば会話できるぞ)


(えっと、こんな感じですか?)


(ああ、聞こえてるよ)



 海の中だと音が地上に比べて聞きづらいので、クリスタが念話の魔法で頭の中で会話ができるようにしてくれた。


 レネとマリンとも同じように念話が繋がっているようで、地上の同じような意思疎通はできそうだった。



「キュゥキュゥ!」


(クルルー)



 そんなカスミ達の周りをマリンフェアリーはくるくる楽しそうに泳ぎ、ガリュウもカスミ達と同じようにかけてもらったエアヴェールの魔法の中で、海中の様子を楽しそうに眺めていた。


 そんなカスミ達一行は、海中遊泳をゆっくりと楽しみつつ、マリンフェアリーを送り届けるべく、沖合の方へと進んでいくのであった。

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