第五話(頴逸視点)
そんなこんなで私は荷造りをしている。
「あ〜、なんで老師の仕事を自分がこなさなきゃならないのさ?」
瀞麗は荷造りをしながらグチグチと不満をたらしていた。
「仕方がないだろう?庸浩がもう歳なんだから。」
「そ・れ・が、不満なんだよ!!あんなにピンピンしてんのにさ!なんで自分で行かないんだ?」
「・・・・。」
「あぁー、せっかく日曜日は友達と映画を見に行こうとしてたのに!!頴逸も見たかったでしょ!?」
瀞麗はものすごい勢いで頴逸に迫った。
「いや、あれは別に見なくても・・・。実際お前もいつも映画観とやらに行ったら眠っているだろうが。」
「だってさ、百合がラブストーリーとか見たがるんだもん。」
「お金の無駄じゃないか。」
「い、いいんだよ!行くだけでも意味はあるんだからさ!」
「・・・・。」
「・・・・。」
話がとぎれると瀞麗は作業に戻り、頴逸も窓に座って外を見ていた。
いつから・・・。
頴逸は瀞麗の方を向く。
いつからこいつはこういうことに無関心になってしまったんだろうか?
こいつは愛という言葉は知っているのに、恋という言葉は知らない。
いや、こいつの中で拒絶してしまっているのかもしれない。
そして・・・
いつからこいつは自分の辛いことを人に開かさなくなったのだろうか?
「ん?何、頴逸?」
「いや・・・。」
頴逸はふいとそっぽ向いた。
「むっ。」
瀞麗はスクッと立つと頴逸のところに来てでこピンをした。
「あのさ、なんか言いたいことがあるなら言ってよ。私は頴逸のようにそんなに生きてないからそんなに経験はないけど、相談にのるよ。」
「・・・別に悩みごととは言ってないが。」
瀞麗は人差し指を頴逸の眉間にあてた。
「じゃあ、何で眉根にしわよってんの?」
「・・・。」
こいつはこういうやつだ。
いつも他人のことばかり気づく。
「あ、実はそんなにラブストーリーが見たかったのか。」
「?」
「いいや、いいんだよ。いくら仙守神といえど見たいものは見たいよねぇ〜。」
頴逸はキッと睨んだ。
「あー、怖い怖い。」
瀞麗はさっと作業に戻った。
こいつはこうやって人がもんもんと悩んでいるときにやってきては、予想はずれなことばっかし言って、悩んでいることからそらさせる。
でも・・・。
「お前、いいやつすぎるんだよ。」
頴逸はボソッと呟いた。
このまま、刻が止まってくれれば・・・。
しかし、その平穏はもろくも崩れていく。




