魔王の子、子竜に助けられる。
ギルファス達が、駆け落ちという名の逃亡の旅に出て、数か月。東から北へ、北から南へ、南から西へ。だが、どこに行ってもどこに逃げても人間達は追ってきた。
エリーは長かった髪を切り、男装までしている。今は森でギルファスと2人、野営の準備をしているところだ。オーム達3人は、食料や旅に必要な物を揃えに街に出掛けている。
「エリー、大丈夫か・・・?」
ギルファスとエリーは、この旅で想いを交わし合い、恋人になった。
「ええ、ギル、大丈夫です。・・・ごめんなさい、私のせいでこんなことに・・・。」
男装をしていても、エリーは変わらず美しい。街へ行けば、目立ってしまいすぐに人間に見つかるだろう。
(この数か月で、ずいぶんとやつれてしまったな・・・。)
ギルファスは食事の支度をするエリーの短くなってしまった髪に触れる。
「気にするな、オレが・・・オレ達が、一緒に居たいんだ。・・・あ、オーム達が戻ってきたかな?あれ?ユージは?」
オームとフラーが走ってくる。今は大きな魔術は使えない。魔物がいると人間達に知られてしまうからだ。だが2人と一緒に街に出た筈の、ユージの姿は無かった。
「ギル!!・・・ユージが、捕まった!!」
「ええっ!!なんでだよ!!」
(エリーじゃなくて、なんでユージが捕まるんだ・・・行動には気をつけていた筈なのに・・・。)
「いや、捕まったっていうより、あいつ、自分から・・・?解らない。あの鎧は、皇国の物だった・・・市場で、食料買ってる時で・・・俺はユージから離れてたんだ。そしたらフラーが呼びに来て・・・とりあえず俺達は気付かれなかったから、急いで走って逃げて戻ってきた・・・。」
オームは青ざめている。その場に倒れそうになったところをフラーが支えた。
「ギル様!申し訳ありません!ユージ様が、何やら皇国の手配書を見て・・・これです。それで、それでなんだか笑って、納得されて・・・突然別れを告げたと思ったら・・・兵士と共に行ってしまわれたのです!!」
フラーが差し出したのは、一枚の手配書。そこには、消えた大国の姫と・・・そして異世界から召喚した勇者を探していると、書かれていた。
「・・・異世界から召喚された、勇者・・・?」
(どういうことだ?でもこの特徴は、ユージと同じだ・・・。なぜ皇国は・・・ユージを探す?これが事実なら、皇国は一体なんのためにユージを召喚したんだ・・・?)
「とにかく、ここもやばい。フラー、こっちを片付けろ、エリーはそっちを頼む。早く、離れよう!!」
オームとフラーは荷物をまとめる。エリーも、途中だった食事の支度を慌てて片付ける。
「ああ・・・。」
(でもどこへ?ここより他に、逃げる場所なんて、あるのか・・・?)
ギルファス達が薄暗くなった森を抜けようと急いでいると、目の前に、一人の赤色の髪の少女が現れた。
「人間じゃないお兄ちゃん達、何からにげてるの・・・?」
少女は、竜族の娘だった。ギルファスの紅くなった眼を見て、人間が立ち入る事の出来ない、竜族の村に案内してくれた。
「魔王の子、王子よ。よくぞいらして下さいました。ここは、竜の棲家。人間がそう簡単に入ってくる事などありません。ここならば安全です。」
「おかしいなぁ・・・。」
「ユリ?如何した?子らは二人とも昼寝の時間か。心地良さそうに、よく眠っているではないか?(今なら、ユリと・・・。)」
「いやあの、いまさらなんですけど、エルにもマリにも、セル様と同じツノが生えてないんですよ!!」
「ああ、そういうことか。」
「これって、大きくなったら2人とも生えてくるんですか?」
「マリには生えないだろうな。」
「え?なんで?」
「これは、成人し、魔王を継承した時に生えるものなのだ。指環を受け継ぎ、魔王の力を得た時、初めてその証として生える。」
「・・・それ、けっこう重要ですよね。(あんま気にしてなかった!!)」
「ああ、まあ、男としての、証、とも言えるな。力が強ければ強いほど、大きなものになるのだ。」
「へー。なんかそれって・・・。」
「ん?」
「いや、下ネタっぽくなるからやめとこう・・・。」
「?・・・ユリ、子らも良く眠っている事だし・・・たまには、この角を愛でてみる、というのはどうだ?(久し振りに二人の時間を・・・。)」
「あかん!!いやらしい!!!」
「ユリ!?」




