魔王の子、駆け落ちをする。
ギルファス達が村に戻って数日。エリーとフラーも打ち解けた。ユージは、あれから何故かずっと暗い。
「なあ、ユージ、どうしたんだよ?」
ギルファスは心配だ。寝てるときもずっとうなされてて、寝言で、全くりがどうのとか言っている。
(なんだ?またげーむの言葉かな。らすぼすを倒すとか言ってたけど、らすぼすって一体なんだろう。)
ユージによると、らすぼすは魔王で、すてーじをくりあーしないといけないらしい。だが、この世界の魔王は、ギルファスの父だ。
「やっぱり、ユージを早く元の世界に帰さないといけないかもしれないな・・・。でもどうやって?こいつはそもそも、なんでこの世界に来たんだ?」
・・・ギルファス達が知らない、ここは皇国の城の大広間。
「姫が消えたとは、どういう事だ!!」
「はっ、申し訳ありません、皇太子殿下・・・実は森の途中で何か・・・魔物に襲われた様です。姫の王冠を、洞窟の近くで発見しました。」
「なに!?では・・・姫はすでに・・・。」
「いえ!まだ生死は分かっておりません。しかしながら、洞窟に封印されていた魔物の気配も消滅が確認されております。あの辺りの魔素も弱く・・・。」
「では、森を探せ!魔素も弱くなっているのだろう、あの辺りの魔物は殺してしまえ!!」
「はっ、しかし魔物を殺せば・・・魔王が・・・。」
「その為に勇者を召喚したのだろう!?しかし失敗して未だ行方知れずとは・・・。情けない。姫と共に、必ず勇者も探し出せ。ふつうの人間とは気配もニオイも違うから、すぐに判る筈だ。もはや人間界に敵はない!勇者を従え、魔王を倒し、この私が、神の代わりにこの世界総てを支配するのだ。」
「「「はっ!!!」」」
偵察に王都に行っていたオームが戻ってきた。深刻そうな顔をしている。
「やはり、姫の捜索が行われている様だ・・・洞窟の魔素が薄くなった事で、人間達が森に入ってきている。この村にもいつまでも居られないだろうな・・・。皇国も総出で、姫を探すらしい。それともうひとつ、人間達の間では、今回の姫の失踪事件、魔王の仕業だと言われてるみたいだ・・・。」
「・・・まあ、間違いでもないけど・・・。」
(やばいな、なんか大事になってきた・・・でも嫌がるエリーを、このまま放って置けない。)
「ギルファス、どうする?・・・お前がエリーと離れたくないのは解ってる。だが、大きな魔術は使えないだろう、城に戻るか?」
(確かに、城に戻れば安全だ・・・でも、父上達を巻き込むわけにはいかない・・・。)
「城には戻らない。この村を出よう。オーム、皆と、それからザックさんを呼んできてくれ。」
「ああ。わかった。」
ギルファスは出来上がったばかりの紅い石が入った首飾りを握り締めて考える。これは試作品だった。完成したらエリーに渡して・・・告白をしようと思っていた。いつまでも幸福で居られるよう、自分の魔力と願いを込めた。だが、自分はもうこの村に戻ることはないかもしれない。
(オレが魔王の子と知っても、変わらず接してくれた、初めての人間。今までお世話になったザックさんとも・・・もしかしたら、二度と会えなくなってしまうかもしれない。)
「ザックさん、いや師匠。今まで、有難うございました。・・・オレ、ザックさんと出会えて良かったです。楽しかった。これ・・・今までお世話になったお礼です。この村の、役に立てば嬉しいんだけど・・・。」
涙で視界が滲む。ザックは黙って首飾りを受け取り、ギルファスを抱きしめた。
「お前の家はここだ!お前は立派な木こりでオレの・・・オレの息子だ!・・・ギル、いつでも帰ってこい!!」
ザックに別れを告げたギルファスにオーム、フラー、エリー。そして・・・ユージの5人は行く当ての無い旅に出たのだった。
「セル様、ところでこのネックレスって、魔力があるんですよね?例えば、どんなことができるんですか!?」
「うむ・・・そうだな、その首飾りを使えば、小さな魔術くらいは扱えるかもしれぬ。」
「えっ!?魔法が使えるってこと!?(やった!!)」
「ああ、だが、かなり鍛錬を重ねないと、なかなか難しいと思うぞ?魔術というのは、人間が扱うのは難しいものなのだ。そもそも・・・(以下省略)」
「(また難しい事話してるな・・・)え、たとえば・・・ファイヤーボール!!とか、わっ!?」
「!?ユリ、いまのは・・・どうやったのだ!?」
「いや、ふつうに・・・わっ!!セル様、マントが!!燃えてる!!!」
「!?」
「(やばい!!)えっと、ウォーター・・・ショット!?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ユリ・・・頼むから、暫く魔術は使わないでくれ・・・。」
「はい・・・あ、セル様、これタオルです・・・。」
「ああ・・・(凄まじい攻撃力だ・・・私の守りなど無くても・・・ユリならばこの首飾りだけで十分過ぎるくらいだった、のか・・・?)」




