魔王の誓言
「ユリ、話というのは・・・」
いざ話そうとすると、情け無いが思いの外緊張してしまう。
「セル様、そんなに、真面目な顔して、まさか・・・やっぱりなんか悪いお話ですか?」
緊張する私を見て、ユリは眉間に皺を寄せる。
ユリの顔に私が触れると、ユリは心地良さそうにして、眉間の皺がなくなった。
「悪い話などではない。・・・ユリは、私と共にいて、楽しいか?」
眼を大きく見開き、笑顔で頷いてくれる。
「えっ?もちろんです!楽しいし、幸せです!!」
ならば良かった。気持ちを落ち着かせ、戸惑うユリを見つめる。
「セル様、なんでまたそんなこと聞くんですか・・・?」
「ユリ、お前がこの世界に、私の元へ来てくれた事、本当に感謝している。」
ユリは突然の言葉に驚いている。
「お前は私の妻だ。だが、これまで言葉にした事は無かったな。今更だが・・・これから先も、私の傍で笑っていて欲しい。改めて、どうか、私の妻になってくれ。愛している。・・・私はこれまで二度もお前に助けられてしまったが、今後私は生涯を賭けて、お前を守ると、ここに誓う。」
早口にならぬよう、一言一句はっきりと言い切ると、私の心の臓が早鐘の様になる。ユリの驚きの顔が戸惑いに変わり、そしてその意味を理解し、頬を染めて涙でその瞳を潤ませる。
「それって、プロポーズ、ですよね?」
「お前の世界ではそう言うのだな。そうだ、ぷろぽーずだ。私の心をお前に捧げよう。」
胸元にしまっておいた指環を取り出し、ユリの左手の薬指に嵌める。前に私の指環を見て、異世界の文化を教えてくれたな。左手の薬指は心の臓につながっていて、恋人や夫婦はこの指に指環を嵌めるのだと。確かに、心を交わすのなら、この指が良いだろう。
「これって・・・セル様、もしかしてあの腕環と、ひいひいおじいちゃんの石で作ってくれたんですか?きれい・・・。」
指環はユリの薬指に丁度良い大きさにした。実は・・・ユリの手に触れる度、密かに何度も確かめていた。
ユリの薬指に紅い石が光る。その指環は、私の指環と繋がっている。私の心とだ。
「私の心は、常に・・・ユリ、お前と共にある。これから先も、永遠に。」
ユリは愛おしそうに指環に触れる。ふとその手を止め、私の手を取り強く握ると、何時もの満面の笑顔で答えてくれた。
「嬉しいです。私も、セル様を愛してます。私の心も、セル様に捧げます。セル様と、一生ずっと一緒にいたいです!!」
言い切ると、また自分の言葉が恥ずかしかったのだろう。頰を先程よりも紅く染め、手で顔を覆って恥ずかしがり、また笑う。
(ユリ、お前を私の生涯を掛けて、必ず幸福にする。)
愛しさと歓喜に震え、私はユリを抱き寄せ、その唇に深く・・・口付けた。
「ユリ、愛している・・・」
ぷろぽーずし、ユリと互いの気持ちを再確認し合った後、私の好物の塩むすびを食べながら、ユリに異世界でのぷろぽーずの後の男女の儀礼を教えてもらった。まず結婚式。これは婚姻の儀の事だな、神の前で誓い合う事だと言う。それから披露宴で周囲の親しい者達に、夫婦としての宣言をし、その後はねむーんという二人旅に出る。
(ユリの願いならば、どんな些細な事でも叶えてやりたい。)
・・・そこで私は、宴を開催する事をユリと側近達に提案した。
誓言 せいごん 約束を言葉に出して誓うこと。また、その言葉。 せいげん。




