魔王の思案
光が射し込む。眩しさに、眼を開けると、ユリの寝顔が其処にあった。
昨夜は、あまり考えずにユリを寝具に引き込んでしまったが・・・
(コレは、まずいな・・・)
ユリの衣服は乱れ、胸元がはだけている。襦袢の隙間から覗く肌は朝の光に照らされて、白く、吸い寄せられそうだ。
思わず手を伸ばしかけ、ユリが動く。危なかった、触れてしまうところだった。
ユリの肌が私の視界に入らぬ様に寝具をユリの身体に掛け直すと、そのままユリの頭に手を遣り、髪を撫で、頰からやわらかな唇に触れる。口付けたいが・・・いま口付けたら、止まらなくなってしまいそうだな。まだ、思いが通じ合ったばかりだ。
それでも矢張り、愛おしくて、ユリの唇ではなく、額にそっと口付けを落とす。
「ん・・・セル、様・・・?」
「目が覚めたか。私の具合も大分、良くなった様だ。着替えを済ませたら、朝餉にしよう。」
湧き上がる衝動を抑え、ため息を吐く。ユリは朝陽よりも眩しい程の笑顔になると、寝台から飛び降りた。
「「「「我が王よ、御快復、御慶び仕ります!」」」」
着替えを済ませ、ユリと二人で食堂へ降りると、其処にはオームを先頭に、側近達が待っていた。
「本日は何とお目出度き日か!亡き先代王方も、屹度御慶びになりましょうぞ!」
「ええ、本当に。この様な日が来ようとは・・・今年中にもお世継ぎの御顔を拝顔できそうですね。こんなに嬉しい事は御座いません。」
「我も、御子には遊んでもらえるのか!?」
「あらあら、大きな獣とでは難しいんじゃないでしょうかー?赤子とは、とーっても小さくって、可愛らしいものなんですのよ!」
・・・昨夜ユリが私の部屋で眠った事、何故此奴等は知っている。紙吹雪に、祝いの酒樽など用意して、一体何のつもりだ!?
ふと隣のユリを見ると、また顔を真っ赤にし、俯いておる。
「・・・・・」
「・・・この話は後だ。退がれ、早く朝餉の準備をさせろ。」
此奴等が居ると、矢張り落ち着かぬ。・・・そもそも、まだユリとは口吸・・・と言って良いのか、あれは?その後は結局フェイに邪魔をされたし、昨晩は、添い寝しただけだ。
まだ私の方から口付けすら出来ていないと言うのに・・・・それ以上の事など・・・私の心の臓がもたぬわ!!
不満そうに物言いたげな側近達を退がらせると、私とユリは、無言で朝餉の席に着いた。その朝餉が、赤飯であった事など・・・もはや彼奴等が、私をからかっているとしか思えぬ。
あれから数日が過ぎた。相変わらずユリとはぎこちないままだったが、人間界より持ち帰った品々を使い、ユリは城の中で配下達と様々な試みをしている様だ。食事の時間には、嬉しそうに、楽しそうに私に教えてくれる。
回復してからは、溜まった仕事の所為で、食事以外の時間はユリと二人きりになれぬ。
二人きりになっても、一体いつどの様にしてユリに触れれば良い。『妻を娶る』という事の意味は、理解している。私だって、それくらいは知っている。どうすればもっと親しくなれるのだ。思いは通じ合った筈なのに、またもや解決策が浮かばない。
私が執務室から出られぬ今も、シャンなどは、土産物の球が気に入ったのかユリにせがみ、庭でユリと二人きりで遊んでいると聞いた。・・・許せぬ。シャンめ・・・後で覚えておくが良い。ああ、新しい筆をまた一本折ってしまった。
例え側近と言えども、ユリが私以外の者に笑顔を向けている事を想像するだけで、黒い感情が私の心を支配する。ああ、ユリを永久に私の側に閉じ込めてしまえたら、私の心も、満たされるだろうか?筆を折ったのは・・・これで何本目だろう。
陽が傾きかけ、漸と仕事に目処が着いた頃、扉を叩く音が聞こえた。
「入れ。」
恐る恐るゆっくりとこの部屋の扉を開いたのは、ユリだった。胸が高鳴る。ユリに会えず苛立っていた私は、また側近達が新たな仕事を持ってきたのかと思い、つい不機嫌な声を出してしまった。
「あのー、お仕事のじゃましちゃってごめんなさい。みんなに忙しいって聞いてたんですけど、あの、セル様にケーキ焼いたから食べてみて欲しくって・・・」
けーき、とは、人間の街で食したあの菓子のことか?見ればユリの手元には茶器が載っている。
「あっ、もしおじゃまだったら、置いていきますから!」
私の為、だと?此方が無言でいると慌てた様に引き返そうとする。嫌だ。私は慌てて立ち上がる。行かないでくれ。
「邪魔な訳がない!茶にしよう、丁度、一休みしようと思っていたところだ。」
思わず大きな声を出してしまった。ユリは安堵し、微笑むと、応接用の布張りの長椅子の所で、嬉しそうに茶の準備を始めた。
思案 しあん あれこれと考えめぐらすこと。また、 その考え




