星花の魔王
とある魔王の話である。その魔王が得意としていたものがある。戦いには活かすことができない魔法。絶滅した花々を守るためのもの。
星花は咲くと夜空へと飛んでいく。ただ魔王だけがその様子を見ていた。
破られた約束は灰となる。一方的なものは黒き灰に。仕方ないものは白き灰に。風に吹かれていった。
黒の石像はその灰を見ていた。やがて黒灰を纏うようになった。黒灰による嵐は後悔の風刃となって、襲う者に浴びせるという。
魔王の肩には2種類のフクロウが留まっている。白き灰を纏っているフクロウは時計守へと直すべき時計を羽で指すという。黒いフクロウは敵対者に対して、突進して灰を浴びせるのだという。
迷子の果てには、魔王城へと導かれるのだという。その魔王城に眠る宝を掘り起こしてはならない。とてつもなく恐ろしいものが宝箱の中に眠っているのだから。
市場には月光が照らす所があるという。なぜか黒衣の男がそこにいて、祈りを捧げているのだという。どんな祈りなのかは誰にも分からない。古代の言語で祈っているのだというのだから。
光を鍛える鍛冶屋は知っている。虹色の光を鍛え上げたとしても、深い闇に呑まれてしまうのだということを。希望の光を鍛え上げることによって生み出される剣だけが、闇を払えるのだと。
その図書館は地上にはない。空の上にあるのだという。そこにある知識ならば、希望の光の結晶を見つける術が記されていると伝えられている。
ホラ吹き詩人はホラ話をまとめ上げた。嘘か真実なのか、誰にも分からない。けれども、夢を見せることはできる。だから、誰もホラ吹き詩人を止めることはしないのだ。
深い闇の時代の中で生きている人々にとってはホラ吹き詩人のホラであっても、光を見出せていた。
黒衣の男もホラ吹き詩人のホラ話を聞いていた。酒場の奥で酒をチビチビと呑みながら。目を瞑りながら。
庭師であった魔王は育てていく。人間が知らない秘密の庭園で、星花を育てている。どうして魔王になったのかは分からない。ただ、光を育てていただけなのに。不思議なものである。
破られた約束は最初は手紙だったと伝えられている。だが、人々はいつしか口約束をするようになってしまった。黒き灰が溜まっていき、黒灰の嵐になった。ホラ吹き詩人は真実の側面を語っているに過ぎないのかもしれない。
鍛冶屋は久しく光を打っていない。深き闇の時代に人々からは光が見えなくなっていったから。
希望を見出せたとしても、深き闇が光がまだ小さいうちに覆ってしまうのだから。
職人の腕も肩無しだと酒を呑みながら愚痴をこぼす日々。その様子を黒衣の男は見ていた。
月光を鍛え上げたとしても盾ができるだけ。深き闇は月光すらも呑み込んでしまうのだと、ホラ吹き詩人は語りゆく。
魔王城に眠っているとてつもなく恐ろしいもの。それは一体何なのか。あるいは、押し込まれたものかもしれない。誰もそれを開けたことは無いのだから。
今日も魔王は光を育てていく。星々の光を。絶滅したと言われる花々を守っていく。古代人の生き残りでもあるのだからーー。




