灯台守
灯台守は照らし続けていく。光を世界のあちらこちらで。
時を忘れて彫り続けていく彫刻師の手元を明るく照らしている。
行商人の足元を照らして、道に迷わず旅ができるようにしていく。
醸造家が作り出している夜空の雲を照らしていく。共に酒を呑みながら。
詩を刻む墓守の手元を照らす。彼が刻んでいる詩を読むために。
影は光が無ければ闇に覆われたまま。だからこそ、修理するために灯台守の光を必要とするのである。
星が落ちる軌道を知るために黒猫は灯台守の近くにいる。瞳を輝かせて。しかし、覗き込む者は誰もいない。
雪国の王女は求める。明かりを。仲間の白狼の騎士と共に暖を取るために。
司書は夜に本を読む。その様子を灯台守は近くで見ていた。どんな本を読んでいるのだろうと気になっていたが、明日になったら感想を聞こうと思っていた。
星屑の光はどこへ向かっているのだろうか。燃え尽きる前の輝きは流星となるらしい。
白狼の騎士たちは王女を守っている。雪国の中においては、家族のような絆で結ばれているのだから。
仕立て屋はオーロラの糸で服を作り出していく。あらゆる物を糸に変える魔法を持っているのだから。その仕立て屋の服は、灯台守のお気に入りである。
時計職人がいる。彼の時計によって、灯台守はあらゆる場所に光をもたらしていけるのだから。
雲の墓石はどこにあるのだろうか。それは天にある図書館にあるという。
風見鶏は向いている。災いの方向を。知るためには雲の墓石が必要なのに、どこに行けば手に入るのか。
竜の涙を巡る争いがかつてあった。その宝石の力はあらゆる災いを退ける力があったと言われている。今やその宝石の行方は誰も知らない。いや、知ることができないのかもしれない。
眠り続ける王女。その唇にキスをするのは王子。されど、この国に王子の器はどこにあるのか。灯台守はかつて産まれた時はどこかの国の王子だったと、誰かが言っていた。ホラ吹き詩人かもしれないけれども。
導かれていくのは誰なのか。それは誰にも分からないこと。しかし、灯台守の後継者が現れるならば、眠り続けている王女の目は覚めるだろう。彼女がどれくらい眠っていたかは知らないけれども。
影の国は影の中を行き来する者だけが知っている。だが、普通の影では行くことができない。滅んだ国の廃墟にある図書館にならば、方法は書かれているかもしれないが。
世界のあちらこちらで照らされていく光。しかし、闇の世界を照らすことはできるだろうか。
月光は照らしていくのだろう。しかし、仄かに照らすのみ。全てを照らすことはできないのだ。
黒雲が立ち込める場所には近づかないほうが良い。そこにある廃墟は闇の世界に繋がっていると言われているのだから。
とある部屋に置かれた本。そこに風が入ってきて、ページを開かせる。めくるように巡ったのか。それは風すら分からないこと。
オーロラは雪国を照らしていく。静かに。仕立て屋は糸にしていく。魔法によって。新たな服はどんなものになるのか。それはまだ誰も知らないことであるがゆえにーー。




