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涙の画集

 とある墓守が持っている画集について。彼の持っている画集は涙の画集と呼ばれていた。

その画集に描かれている人物たちは、涙を浮かべていたからである。今にも泣きそうな顔をしていた。

 涙を流しながら白い嘘を売っている商人が描かれていた。商業の腹黒さに嘆いているのかもしれない。正直者だからこそ、彼の嘘は白いのかもしれない。

 不眠ゆえに眠ることができない秘書の絵が描かれていた。眠りは彼女から遠ざかっている。眠るための方法を本の中から探しているのだろうか。見つからないからこそ涙を流しているのかもしれない。

 涙の雨が降り続けている絵が描かれていた。雲の上で少年か少女かは分からないが、泣いていた。それが雨となって降り続けていた。どうして泣いているのか、その理由は分からない。

 次のページでは、降り続けていた雨が一つの壺に集まっていた。前のページの涙の雨だろうか。持ち主と思われる老人も泣いていた。

老若男女問わず誰もが涙を流している。

 若い漁師は釣りをしながら、涙を堪えているように見えた。釣り糸の先には星が釣れている。外れかもしれない。別のものを釣りたいのに、外れの星ばかり釣れているから。

 虹色の帽子を被った魔女が泣いている。背後には廃墟があった。彼女の魔法が失敗してしまったのだろうか。それが背後にある廃墟なのかもしれない。愛しい人を失くしてしまったゆえに。

 泣き顔を象ったような魔王城の門が描かれていた。どうして建物が泣いているかは分からない。主君である魔王を失って、それゆえに泣いているのかもしれない。あるいは門を通る人のことを嘆いているのかもしれない。希望を失くすことになるのだから。

 老人が何かを磨いている。泣きながら拭いていた。それは星の欠片。涙によって本来の輝きを取り戻せると信じて、泣きながら磨いているのだろう。

 最後のページには涙の絵が大きく描かれていた。集められた涙はどこへ向かうのか。それは誰にも分からない。

 描かれていた人々たちの涙はどういう涙だったのだろう。悲しいから泣いていたのかもしれない。嬉し涙もあったのかもしれない。涙を集めて磨くことで夜空を照らす星になるのかもしれない。

だからこそ、星の欠片を磨いていた老人は泣いていたのかもしれない。真相は不明だが。 

 しかし、どうして墓守である彼は、この涙の画集を持っていたのか。もしかしたら彼は涙を流すことができないのかもしれない。もしくは、心が擦り切れるままになって、遂には涙を流せなくなったのかもしれない。彼の理由は分からないけれども。

だからこそ、涙の画集を見て涙を流そうと努力しているのかもしれない。誰も彼の心を知ることはできないとしても。

 しかし、彼はなぜこの場所で墓守をしているのだろうか。記憶からも忘れ去られたこの場所で。

古き神々しか知らない場所。彼もまた古き神々の一柱なのだろうか。それとも、使者として近づけているのだろうか。かつて魔王と戦い勝利を収めた勇者として。

 しかし、巨大な力を持ってしまったがゆえに、人々から忘れ去られるという形で、この地にいるのかもしれない。とある勇者の子孫のように。世捨て人にならざるを得なくなったのかもしれないから。

 真相というのは謎のままのほうが魅力あるもの。解き明かして興を失くすのは探偵に任せればいいのかもしない。

探偵の元に涙の画集が届くことになればの話になるのだが。そうそう思い通りにはならないのが世の常でもあるのだからーー。 



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