ガラクタ王
とある王の話である。彼はガラクタ王と呼ばれていた。宝石や財宝ではなく、人々の目から見てガラクタに見える物を集めていたのである。
中には錆びついた聖剣と呼ばれている剣があった。今は友好的な魔王から譲り渡された物である。
修理屋がそれを見て直したいと言ってきたが、ガラクタ王は首を横に振った。そのままの状態が良いと思ったからである。
吟遊詩人が使っていたハープがあった。糸が切れてしまい、何度直しても切れてしまっていた。かつてのような音色は出せなくなったところに、ガラクタ王の目に留まったのである。彼は新しいハープを条件にして、壊れたハープを入手したのだ。
猫しか読めないと伝えられていた魔導書があった。魔法使いたちはただのゴミだと思っていた。それにもガラクタ王は目を留めたのである。いらないのならば譲ってほしいと言って。代わりに高価なエリクサーの材料を要求されたが。
影の無い錆びついた鎌があった。不思議だが、草を刈るのには役に立たなかった。人間の技術では落とすことのできない錆だったのである。ガラクタ王はそれにも目を留めた。新品の農具代と引き換えに入手したのである。
友好的な魔王はその鎌を見て、死神の鎌だと言った。持ち主がいなくなっただけの。それでもガラクタ王は笑っていた。
狼と少年の絵が描かれた水晶球があった。生前は嘘つき占い師と呼ばれた少女が持っていた物だった。なぜか所有していた老人から譲り受けたのである。
ガラクタ王のコレクションには、ガラクタとしてしか見られない物ばかりが溜まっていったのである。
彼は臣下から呆れられていたが、それでも人々からは慕われてもいた。ガラクタと引き換えにして、様々な物を立て替えたのだから。
財政は厳しくなっていたが、ガラクタ王は気にしなかった。彼は見ていたのである。金の巡りを。その循環を。
吟遊詩人の歌によって酒場は潤う。歌い終えた詩人が金を落としていく。町はそれで潤うのだ。
農家も大量に収穫できるようになった。それで以前よりも金が増えた。酒場に行って金を落とすようになったのである。
難病を治すエリクサーによって多くの人が病気を治せるようになった。金よりも生命のほうが大きいのだから。
友好的な魔王はそれを見て、驚いていた。ガラクタ王の行動はそれを見ていたことに。
富の循環によって町は潤っていた。ガラクタ王だから成せることだったのである。
友好的な魔王はそのことを認めて一種の石像を贈った。町の番人として、竜騎士の石像を贈ったのである。
町の防衛まで手に入れたガラクタ王は、賢人王の一人にいつしか数えられていったのである。
それから何百年経ったのだろうか。ガラクタ王の功績は伝えられていたが、彼も人の子である。老いて亡くなったのだ。
それでも町は守られている。今もある。友好的な魔王が贈った竜騎士の石像が守り続けているのだから。
ガラクタ王の墓守は竜騎士の石像を修理する職人として働きながら、墓を守っている。ガラクタ王に敬意を表しながら。
彼の功績は忘れ去られていないのだ。ガラクタに価値を見出せるのは他にいないのだからーー。




