美術館
ある美術館にいた。どうやって入ったのかは分からない。ただ、暇つぶし程度に、展示されている絵画を観に歩き出した。
1枚目の絵画は、老人が星の海に釣り糸を垂らしていた。何を釣り上げようとしているかは分からなかった。魚ではないのかもしれない。
2枚目の絵画は、人の頭が描かれていた。脳の部分は古い本に置き換わってた。記憶を表しているのだろうか。新しい情報はどこに入るのだろうと、気になりはしたけども。
3枚目の絵画は、桜の上に雪が積もっていた。女性が満足そうに微笑んでいるように思えた。もしかしたら雪女なのかもしれない。冬の子が眠っていなければいいのだけど。
4枚目の絵画は、深海に建物が描かれていた。本のシンボルがあるから、もしかしたら図書館なのかもしれない。保存状態はどうなっているのだろうか。そのことが気になっていた。
5枚目の絵画は、水晶球が描かれていた。占い師なのだろう。しかし、狼と少年が描かれていた。
狼少年、すなわち嘘つきを表しているのかもしれない。なら、この占い師は嘘つきなのか。出会いたくないな。そう思った。
6枚目の絵画は、農夫の絵だった。しかし、地面のほうを見ると白かった。ところどころに青が入っている。もしかしたら、雲を耕しているのだろうか。なら、収穫物は天気かもしれない。分からないけれども。
7枚目の絵画は、ステレオタイプの吸血鬼が白衣を着た医者と手を結んでいた。友情を表しているのかもしれない。裏で暗躍しているのかもしれない。分からないけれども。
8枚目の絵画は、深海の建物だった。手紙のシンボルがあるから、郵便局なのかもしれない。あの手紙を読む人はいるだろうか。いないとしたら、なんだか寂しく思える。
9枚目の絵画は、王冠を被った道化師がいた。表情を見ると嫌そうな感じがしている。何故か、「自分は道化師だ」と主張しているような眼差しをしているように思えた。
10枚目の絵画は、黒い影を縫っているように思えた。白い糸で分かりやすかったように見える。全身バラバラになった影たちを縫い直しているのだろうか。この修理人の技術はプロ意識があるように感じられた。
一通り観て回ったが、なかなかに面白い絵画だと思えた。誰が書いたのか分からないけれども。
これらの絵をどうして描くことができたのだろうか。現実にはあり得ないものばかりなのに。
この絵画を描いた人は独特の想像力を持っているように思える。じゃなかったら、もっと現実的になるはずだろう。
自分がイメージしたものを絵画にする。しかも、10枚とも異なるタッチで描かれている。なのに、1人の人が描いたとしか思えない。絵を描く才能があるのだろう。自分の手で形にする才能も。
あるいは、それを修得できる環境にいたのかもしれない。多くの人に理解されなかったのかもしれない。
ゴッホのように生前は理解されなくとも、死後に評価されたのかもしれない。生死は分からないけれども。
ところで、この美術館に出口はあるのだろうか。それとも、無いのだろうか。入口すら不明なのに。
帰りたい気持ちと、まだ眺めていたい気持ちがある。観飽きるまでここにいるとしよう。そうしたら何か分かるかもしれないのだから。
そう考えると再び1枚目の絵画を観に行くために歩き出したのだーー。




