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深海の図書館

 深海にある図書館に収められている本。それは一体誰の夢なのか。

灯台守は眠り続けている。もしかしたら彼が見ている夢なのかもしれない。

 魔王は暇を感じていた。だから庭師と共に庭いじりをしていた。月の光を浴びて咲く月光花。

その花の美しさは昼間に咲く花よりも美しいらしい。

魔王の持つ魔法であっても、昼間に咲かせることはできない。夜空だけの特権のときもあった。

 竜による郵便配達は空を駆け巡っている。彼らの手紙は世界中どこにでも届く。

例えそれが鏡の中であろうとも。場所は関係無いのである。

 魔法を極めし魔神と呼ばれる存在がいる。魔王すら修得していない魔法を扱い、世界を跨いでいるそうだ。ただの魔法使いのフリをしながら、大魔法を扱ってもいる。彼にしか扱うことはできないが。しかし、残念かな。彼には後を継がせる者がいない。未来視の魔法で弟子たちの未来を視たが、悪事に手を染めている者ばかり。せっかくの魔法も悪事に使われてしまうのならば、後を継がせないようにしたのである。

 もしくは悪事を働いたら、魔力そのものを失う。その呪術を開発すればいいのだが労力に見合わない。

 だからこそ、後継者を不在にするために、不死の魔法に手を出したのである。魔導死霊、すなわちリッチになることによって。

そうすれば、後継者による悪事の未来は失われる。自身の生と引き換えにして。

彼がいる場所は千の鏡の迷宮の突破者のみが知っている。しかし、誰もその迷宮を突破した者はいない。どこにあるのかさえ、分からないがゆえに。

 すれ違う場所はいつも決まっている。本の貸し借りの場所。図書館で。彼は想いを伝えずにいた。彼女もまた同じ。その恋路の結末は何なのか。魔神と呼ばれた魔法使いはそれをただ見守っていくばかり。青春だと感じながら。

 灯台守が目覚めたらどうなるのか。開かれた本は一人でに閉じていく。夢から目覚めたのだから。そして、灯台守が眠るたびに開かれていく。一人でに閉じたように、一人でに開くのだ。

 世界は終わった。なのに、たった一人で庭をいじっていた者がいた。世界を跨ぐ魔王に目を付けられた彼は、魔王に誘われるようにして付いていった。その世界は邪神の手に落ちてしまったのだから。悔いはあっても、未練は無かったのである。

 深海の図書館に収められている別の本には、一匹のケットシーが吸血鬼と小悪魔を連れて、邪神を倒す物語があるという。それは予言書のコーナーにあるという。真相は不明なのだが。

 青春の彼らにはどんな未来が待っているのだろうか。本の貸し借りですれ違っている彼らに、魔法使いは敢えて未来視の魔法を使わずにいた。彼らの青春の発展を見届けたかったから。

 魔王は知っている。庭師は察している。魔神と呼ばれた魔法使いは気づいている。知らないのは青春の彼らだけ。

この世界は灯台守が見ている夢の中に過ぎないのだということを。けれど、それでも構わない。

灯台守が夢を見ている間は、確かに自分たちが存在しているのだと。例えそれが深海の図書館に収められている本に書かれている通りだとしても。確かに息づいているのだから。

 深海の図書館に訪れるのは誰なのか。それはまだ誰も知らないこと。あるいは偽神のみが知っているのかもしれないけれどもーー。


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