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月盗み

 月は盗まれてしまった。犯人は誰なのかも分からない。当初は雪女が疑われていた。以前、春を盗んだ前科があったからである。しかし、彼女は潔白だったのである。

では、犯人は誰なのか。内部の者なのか。それとも、外部の者なのか。今の時点では分からない。

 遺品を扱う魔女なのか。魔女は月の力によって魔法が扱えると聞く。しかし、力に無頓着な彼女も潔白であった。

 新参者である土地神が候補に挙がった。しかし、彼もまた潔白であった。むしろ、月を見て皆が癒されればいいのにとすら思っていた。

 魔王の庭師に視線が集まる。しかし、彼が育てている夢の花は適度な月光によって育つのであり、浴び過ぎれば枯れてしまいかねないもの。月を独占する理由が皆無なため潔白となった。

 骨董品を扱う竜は眠っていた。月の光は彼とは無縁。今は、古びた品を集めては眺める日々を送っている。盗む動機は無かった。古竜でもあるが道楽好きでもある。彼ならば天星を球にすることはできるだろう。古き呪文を使えば。しかし、それをする理由など見当たらないのである。

 仕立て屋は一つの仮説を立てた。それは月が盗まれたのではなく、雲によって覆われているのではないかというもの。ここ最近の雲は厚みがある時が多かった。もしかしたら、その影響なのではないかと。

 皆がその仮説を聞いて思い当たることがあった。雲の厚さは自然的なものではない。人工的なものかもしれなかった。では、外部の者の犯行かもしれない。皆でその仮説の検証を始めた。

 集風の少年によって、月を盗むほどに厚い雲を晴らしてもらうことが決まった。竜騎士の竜の背によって行くことにしたのである。古竜には無理させられないから。

 集風の少年は静かな音楽祭の中で耳を澄ましていた。静音を楽しんでいた。しかし、月光の歌だけは聞こえてこないことに疑問を抱いていた。竜騎士の説明を受けて、雲を晴らすことにしたのである。

 竜騎士は皆を連れて竜の背にまたがり上空へ向かった。しかし、雲の中にいた何者かによって、近づくことはできなかったのである。

 それは黒雲の巨人であった。彼は自らの領土を広げるために、月を厚い雲で覆ったのである。 

それによって世界を黒雲で満たそうとしたのだ。だがしかし、彼の野望は潰えることになる。

月の光を受けた被害者たちがそれぞれの力を連携させ、黒雲の巨人を攻撃したから。しかも、圧倒的な連携力によって、防御の隙を与えなかったのである。

 黒雲の巨人は反撃を試みた。しかし、高密度の連携力を崩すことはできない。拳を振り下ろそうとしても、魔女と土地神の魔法を受ける。竜の息吹を浴びる。集風の少年によって風の刃が吹き裂いていく。竜騎士の剣技が黒雲の巨人を斬り裂いていく。連携力の繋ぎ目が見つからない。そこさえ突ければ、連携力を崩せるというのに。しかし、庭師と仕立て屋によるサポートによって繋ぎ目が塞がれる。

 最後には黒雲の巨人が倒されてしまい、地面へと落ちていってしまった。集風の少年が厚い雲を吹き飛ばすと、月光が再び地上を照らしたのである。

 こうして月盗みの事件は解決を迎えた。彼らによって倒された黒雲の巨人は古竜が持っていた魔法の壺の中に封印されることになったのだ。

 久しぶりの月の光。それを浴びた皆は各々が癒され、力を得て、育てていったのである。

 皆の活躍を記した書は、透明人間の王国にある童話の中に収められているという。

彫刻師たちによって石板に彫られていると良いのだが。それはまだ誰も知らないのだーー


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