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9、HYDRA CHRYSALIS ―AWAKENING― 「境界が崩れた時、世界は真実に目覚める」  作者: Nao9999


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第68話 始原の雫

どんな真実にも、始まりがある。


世界を書き換えた力は、

ある日突然生まれたものではない。


その始まりは、一滴の雫だった。

螺旋階段は、どこまでも続いていた。


悠真たちは慎重に足を進める。


壁面には規則正しく蒼い光が灯り、まるで彼らを導いているかのようだった。


「地下施設……。」


責任者が小さく呟く。


「こんな規模のものが存在していたなんて……。」


誰も答えない。


それほどまでに、目の前の光景は現実離れしていた。


やがて階段は終わり、一枚の巨大な扉が姿を現す。


表面には無数の紋様が刻まれ、その中心には一滴の雫を模した紋章が浮かび上がっていた。


悠真が近づく。


――ドクン。


胸の奥でNOAHが脈打つ。


【NOAH LINK 5.4%】


【始原保管庫を確認】


【管理者認証を開始】


蒼い光が悠真の手を包み込む。


低い駆動音とともに、巨大な扉がゆっくりと開いた。


その先に広がっていたのは、想像を遥かに超える空間だった。


天井は見えない。


無数の光が星空のように瞬いている。


中央には、透明な球体。


直径は十メートルを超えていた。


球体の内部には、一滴の蒼い水が静かに浮かんでいる。


小さな雫。


だが、その存在感は圧倒的だった。


澪は思わず息を呑む。


「これが……初代HYDRAコア。」


悠真は一歩ずつ近づく。


不思議と恐怖はなかった。


懐かしさだけが胸に満ちていく。


その時だった。


雫が静かに揺れた。


波紋が球体全体へ広がる。


そして、誰も聞いたことのない声が響いた。


『……ようやく。』


悠真たちは身構える。


しかし、その声には敵意がなかった。


『長い時間だった。』


『人の子よ。』


悠真は静かに問いかける。


「お前が……HYDRAなのか?」


少しの沈黙。


『違う。』


『HYDRAとは、お前たちが付けた名前。』


『私は、ただ在る。』


澪は思わず顔を見合わせる。


責任者も言葉を失っていた。


『私は世界の始まりを見た。』


『海が生まれる前も。』


『命が芽吹く前も。』


『そして、お前たちが初めて空を見上げた日も。』


その言葉は、とても嘘には聞こえなかった。


悠真は一つの疑問を口にする。


「どうして今まで眠っていた?」


球体の光が静かに揺れる。


『眠っていたのではない。』


『待っていた。』


『対話できる者が現れる日を。』


その瞬間。


研究施設全体が激しく揺れた。


ゴゴゴゴゴ……!


警報が鳴り響く。


『警告。』


『施設外周へ多数の侵入反応を確認。』


責任者が端末を操作する。


モニターへ外部映像が映し出された。


そこには、武装した部隊が施設を包囲していた。


装甲車。


武装ヘリ。


完全武装の兵士たち。


そして、その先頭に立つ一人の男。


黒いコートを羽織った壮年の男が、ゆっくりと施設を見上げる。


「誰だ……。」


澪が呟く。


責任者の顔色が変わった。


「そんな……。」


「まさか……。」


男は静かに通信機を口元へ運ぶ。


『こちら特別対策機関《ECLIPSE》。』


『対象施設を確認。』


『HYDRAコアを回収する。』


『抵抗する者は、すべて排除せよ。』


その命令と同時に。


施設の外で爆発音が響いた。


物語は、新たな敵の登場によって大きく動き始める。

第68話をお読みいただき、ありがとうございました。


ついに「始原の雫」と呼ぶべき存在が姿を現し、HYDRAが敵ではなく、人類との対話を待ち続けていた存在であることが示されました。


しかし、その真実を知る者たちの前に、新たな勢力《ECLIPSE》が現れます。


彼らの目的はHYDRAコアの回収。


第4章「世界胎動」は、ここから新たな局面へ突入します。


引き続き『HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH―』をよろしくお願いいたします。

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