潤、縄文時代にもマコガレイを見つける
前回の婚活パーティで「シュレーディンガーのカレイ理論」を披露し、星座までマコガレイに見えてしまった広瀬潤(39)は、2度目の婚活パーティへ向かった。
母は玄関で言った。
「潤、今日は普通の話をするのよ」
「もちろんだよ。縄文時代の話をするだけだよ」
「それは普通じゃないぞ」
父が即答した。
◇婚活パーティ開始
会場は落ち着いた雰囲気のラウンジ。潤は
(今日は絶対に成功する)
と自信満々だった。
最初に話しかけてきた女性が微笑んだ。
「広瀬さんは歴史が好きなんですか?」
「はい! 特に縄文時代が好きです!」
「縄文時代って、貝塚とかですよね?」
「そうです!縄文人は貝や魚を食べていました!」
「へぇ〜」
潤はここだ、と確信した。
◇潤、縄文時代にカレイを持ち込む
「つまりですね……縄文人が魚を食べていたということは……貝塚にはマコガレイの骨も残っているに違いないんです!」
女性は固まった。
「え……?」
「縄文人は海辺で暮らしていました。海辺にはカレイがいます。だから縄文人は絶対にマコガレイを食べていたんです!」
「はぁ……?」
潤は勢いづいた。
「つまり、縄文時代の貝塚は“古代カレイ資料館”なんです!」
「なるほど……」
◇空気が冷えていく
別の女性が話しかけてきた。
「広瀬さん、縄文時代って土器とかですよね?」
「そうです!そして土器で煮付けたのは……マコガレイです!」
「いや、そこまで言い切れます……?」
「縄文人は魚を食べていたんです!魚を食べていたということは、マコガレイを食べていたんです!」
「そうですか……」
周囲の空気は、冬の日本海のように冷え切っていった。
◇さらに冷える
潤は止まらない。
「貝塚からは貝の殻が大量に出ますよね? でも、僕は思うんです。その下にはマコガレイの骨が眠っている!」
「そうかもしれませんね……」
「かもじゃない、絶対にあるんです! 縄文人はカレイを食べていたんです!」
「うわぁ……」
女性たちはそっと距離を置き始めた。
◇そして伝説へ
司会者が声を張った。
「そろそろフリータイム終了です。最後に気になる方へメッセージカードを……」
潤は胸を張った。
「今日は縄文時代のマコガレイを確定させる日だ……!」
しかし、潤へのカードは誰からも届かなかった。
司会者は優しい声で言った。
「広瀬さん……今日も独創的なお話でしたね……」
「ありがとうございます。しかし縄文時代のマコガレイはまだ確定していません。これも“シュレーディンガーのカレイ”です」
「そ、そうですね……」
◇帰宅
家に帰ると、母が聞いた。
「潤、どうだった?」
「縄文時代のマコガレイは誰にも理解されなかったよ」
「そりゃそうだ」
父が即答した。
潤は夜空を見上げた。
「縄文人も……星を見て……マコガレイを思い浮かべたのかな……」
こうして潤の“カレイ哲学”は、ついに縄文時代にまで進出したのであった。




