潤、5度目の婚活パーティで生命保険に勧誘される
5度目の婚活パーティ。広瀬潤(39)は、会場に入る前に深呼吸した。
「今日は……壺も水素水も絶対に買わない……僕は学んだんだ……」
胸を張って受付を通過した。
◇今回の相手は“ビジネスライク”
席に案内されると、向かいの女性がにこやかに話しかけてきた。
「広瀬さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
女性はすぐに潤の職業に反応した。
「郵便局で働いてるんですか? 安定してますね〜」
潤は頷いた。
「はい、まあ……」
女性は急に身を乗り出した。
「ところで広瀬さん、生命保険って入ってます?」
潤は一瞬固まった。
(……来た……!壺でも水素水でもない……新しい刺客……!)
◇生命保険の営業が始まる
女性はバッグからパンフレットを取り出した。
「今の時代、保険は絶対必要ですよ! もしもの時に家族を守れますし、老後の資金にもなりますし……」
潤は慌てて言った。
「あ、あの……僕、郵便局で働いてるので……かんぽ生命に入ってるんですけど……」
女性は満面の笑み。
「大丈夫です! かんぽ生命に入ってても、“もう一つ”入っておくと安心なんですよ!」
女性はさらに畳みかけた。
「今なら婚活パーティ特別プレゼントもあります!」
潤はdéjàvuを感じた。
(特別……壺の時も水素水の時も聞いた……なんで婚活で特別プレゼントがあるんだ……?)
◇危うく加入しそうになる潤
女性はパンフレットを潤の手に押しつけた。
「広瀬さん、これ絶対入ったほうがいいですよ! あなたは優しい人だから、保険が必要なんです!」
潤は弱った。
「僕、優しいと保険が必要なんですか……?」
女性は真剣だった。
「はい。優しい人ほど守るものが多いんです!」
潤は財布に手を伸ばしかけた。
(いや……でも……確かに僕は優しいし……守るもの……あるのかな……? いや、ない気もするけど……)
女性はさらに迫る。
「広瀬さん、入りましょう!」
潤は危うく頷きそうになった。
◇しかし、奇跡的に回避する
その瞬間、スタッフが近づいてきた。
「すみません、その方……以前からここで“保険営業”をして注意を受けてまして……」
女性は慌てて席を離れた。
潤は呆然とした。
「……また……危なかった……僕、もう少しで二つ目の生命保険に入るところだった……」
スタッフは優しく言った。
「お気をつけくださいね。婚活パーティで保険には入らなくていいんです」
潤は深く頷いた。
◇帰宅
母が聞いた。
「潤、婚活どうだった?」
「生命保険に入らされそうになった」
父が即答した。
「潤、もう寝なさい」
潤はため息をついた。
「壺の次は水素水で……その次は生命保険か……婚活って……いろんなものが売られてくるんだな……」




