潤、夜空までマコガレイにする
婚活パーティで「シュレーディンガーのカレイ理論」を披露し、見事に全員から距離を置かれた広瀬潤(39)は、帰り道の公園でベンチに座っていた。
「今日は……誰にも確定されなかったな……」
潤はため息をつき、ふと夜空を見上げた。
満天の星が広がっている。普通なら「きれいだな」と思うところだが、潤は違った。
「……あれ?星が……マコガレイに見える……」
星座が広がる夜空を見つめる潤の脳内では、星々がゆっくりと平たい魚の形に結びついていく。
「うわ……完全にマコガレイだ……オリオン座も、北斗七星も、全部マコガレイだ……」
潤は頭を抱えた。
「僕の脳が……カレイに侵食されている……」
◇潤、星座をカレイ化する
潤は夜空を指さしながら独り言を続けた。
「あれは……マコガレイ座……いや、マガレイ座かもしれない……いや、イシガレイ座かもしれない……」
星座を全部カレイに変換し始めた。
「つまり、夜空そのものが“シュレーディンガーの星座”なんだ……確定するまで、全部マコガレイであり、全部マコガレイじゃない……」
潤は自分の理論に酔いしれ始めた。
「婚活パーティで誰にも刺さらなかったけど……夜空には刺さってる……!」
誰もいない公園で、潤は満足げに頷いた。
ちょうどその時、散歩に来た両親が公園に現れた。
「あら潤、こんなところにいたの」
母が声をかける。
「潤、婚活どうだった」
父が続ける。
潤は夜空を指さした。
「父さん、母さん……星が全部マコガレイに見えるんだ……」
「潤、それは疲れてるのよ」
母が即答した。
「いや、違うんだ。僕は気づいてしまったんだ。夜空も、人生も、婚活も……全部“シュレーディンガーのカレイ”なんだよ」
「潤、もう帰るぞ」
父が潤の肩をつかんだ。
◇帰り道
母はため息をつきながら言った。
「潤、婚活で変な話をしすぎたんじゃないの?」
「いや、僕は本気で伝えたんだ。人生はカレイみたいに、確定するまで何かわからないって」
「潤、それは普通の人には伝わらないのよ」
母が優しく言った。
潤は夜空をもう一度見上げた。
「でも……あの星の並び、どう見てもマコガレイなんだよな……」
「潤、寝ろ」
父が即答した。
◇家に着いて
潤は布団に入りながらつぶやいた。
「婚活も星座もカレイも……全部確定しない……僕の人生は、永遠に“シュレーディンガーのカレイ”なんだ……」
母はドア越しに言った。
「潤、明日は普通の話をしなさいね」
父も続けた。
「潤、星をカレイにするな」
潤は苦笑しながら目を閉じた。
こうして、潤の“カレイ哲学”はついに夜空にまで進出したのであった。




