潤、軽いやけどで全ての気力を失う
広瀬潤(39)は、夕食にカラスガレイの煮つけを作っていた。
「今日は絶対うまく作る……昨日のアブラガレイ祭りの勢いをそのまま……!」
鍋の前で真剣そのもの。
煮汁の香りも最高。身の厚さも完璧。潤は鼻歌まで歌っていた。
◇しかし“その瞬間”は突然訪れる
煮汁を味見しようと、鍋のフタを少し持ち上げた瞬間——
ピッ!
熱い蒸気が指先に触れた。
「……あっつ!!」
ほんの“ちょっと”のやけど。赤くなる程度。冷やせばすぐ治るレベル。
しかし潤は固まった。
「……もうダメだ……僕……今日はもう……生きる気力が出ない……」
◇料理、即中断
潤は鍋を見つめた。
「カラスガレイ……ごめん……僕……もう続けられない……」
火を止めた。鍋の中のカラスガレイは、煮つけになりかけた状態で放置された。
潤はふらふらと寝室へ向かった。
◇布団へダイブ
「……今日はもう……終わりだ……」
そのまま布団にダイブ。
煮つけの途中だったことも、夕食を食べていないことも、全部どうでもよくなった。
潤はそのまま眠りに落ちた。
◇朝になってしまう
翌朝。
潤は布団の中で目を開けた。
「……あれ……僕……昨日……何してたんだっけ……?」
キッチンへ行くと、鍋の中でカラスガレイが静かに眠っていた。
煮つけ未遂のまま。
潤は頭を抱えた。
「……僕……あの軽いやけどで料理を放棄して……そのまま寝たのだった……」
自分でも信じられない。
しかし指先を見て言った。
「……まあ……仕方ないよね……人間だもの」




