↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/67

佐伯、余暇中にかかしを見つける

 休日の午後。同僚の潤もいない、完全なるオフ。佐伯は近所の公園を散歩していた。


「やっぱり休みの日は静かでいいな……職場の“シュレーディンガーの人”騒ぎから離れられるし……」


 そう、あの騒ぎ。潤がかかし事件を広め、職場全体が「シュレーディンガーの人」を気に入り、局長の佐藤まで使い始めたあの混沌。


 佐伯だけが置いてけぼりだった。


 ◇公園の片隅に“それ”はいた


 ふと、公園の端に視線を向けると——


 人影が立っていた。


 帽子をかぶり、じっと前を向いている。


 佐伯は思った。


「……あれ、誰か立ってるのか?」


 近づいてみる。


 動かない。


 さらに近づく。


 まったく動かない。


 そして気づく。


「……かかしじゃん……」


 佐伯は固まった。


 ◇思い出してしまう“あの言葉”


 脳内に、職場のあの声がよみがえる。


「確認するまではシュレーディンガーの人だよ!」


「量子かかしだ!」


「局長まで使ってるぞ!」


「今日の案件はシュレーディンガーの人状態だな!」


 佐伯は頭を抱えた。


「……いやいやいや……なんで俺、休日にまで思い出してるんだよ……あれは職場のノリだろ……!」


 しかし目の前のかかしは、まさに“人かもしれないし、かかしかもしれない”状態だった。


 佐伯は悔しさで震えた。


「……くそ……なんでこんなときに限って……あの言葉がぴったりなんだよ……!」


 ◇認めたくないのに、ぴったりすぎる


 佐伯はかかしを見つめた。


「……いや、これは……どう見ても……シュレーディンガーの人……なんだよな……」


 言ってしまった。


 自分で言ってしまった。


 佐伯は膝に手をついてうなだれた。


「……潤のやつ……なんでこんな言葉を流行らせたんだ……俺まで使っちゃってるじゃないか……悔しい……!」


 公園の風が静かに吹いた。


 かかしは何も言わない。


 ただ、佐伯の敗北感だけが残った。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。