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潤、アブラガレイに取りつかれる

 前日の“回らない寿司屋・極端ラインナップ事件”から一夜明けた。


 広瀬潤(39)と佐伯は、昼休みに同時に言った。


「寿司、諦めきれない」


「だよな」


 ふたりは即決した。


「回転ずし行こう」


「行こう」


 ◇回転ずしで念願のカレイを発見


 店に入ると、潤はレーンを凝視した。


「佐伯……見て……カレイある……」


「昨日の分まで楽しめよ」


 潤は皿を取って一口食べた。


「……うまっ……!これは……絶対……マコガレイだ……!」


 佐伯は苦笑した。


「また勝手に種類決めつけてるな」


 潤は自信満々だった。


「この味はマコガレイだよ。僕の舌が言ってるんだ」


 ◇店員に聞いたらまさかのアブラガレイ


 潤は店員を呼んだ。


「すみません、このカレイって……マコガレイですよね?」


 店員は即答した。


「アブラガレイです」


 潤は固まった。


「……え?」


 佐伯は肩を震わせた。


「潤……また外したな……」


 店員は続けた。


「うち、マコガレイは扱ってないんですよ。全部アブラガレイです」


 潤は皿を見つめた。


「アブラガレイ……アブラガレイ……アブラガレイ……」


 佐伯は心配した。


「潤、落ち着け」


 ◇帰宅後、アブラガレイの話しかしない


 その日の夜。潤は実家に帰ると、玄関で母に言った。


「母さん……アブラガレイって知ってる?」


「急にどうしたの?」


 夕食中も言った。


「アブラガレイってね、脂が乗ってて……」


 父は困惑した。


「潤、お前……今日アブラガレイに何があった?」


 風呂上がりも言った。


「アブラガレイの握りって最高なんだよ……」


 母はため息をついた。


「潤、もう寝なさい」


 ◇翌日の職場でもアブラガレイ


 翌朝。潤は佐伯の席に駆け寄った。


「佐伯!今日も寿司、アブラガレイ食べに行こう!」


 佐伯はコーヒーを吹きかけた。


「昨日行ったばかりだろ!!」


 潤は真剣だった。


「でも……アブラガレイが僕を呼んでる気がするんだ」


「気のせいだよ」


 潤はさらに食い下がった。


「アブラガレイの握り……もう一回食べたい……」


 佐伯は頭を抱えた。


「潤……お前……完全にアブラガレイに取りつかれてるぞ……」


 潤は静かに頷いた。


「そう……僕は……アブラガレイ男だ……」


 

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