潤、アブラガレイを求めて
佐伯に断られた昼休みから数時間。広瀬潤(39)は、家でじっとしていられなかった。
「……アブラガレイ……もう一回食べたい……」
気づけば玄関に立っていた。
「よし、行こう。昨日の回転ずしへ……!」
◇回転ずしでカレイ祭りが始まる
店に入ると、潤は迷わずレーンを凝視した。
「……あった……カレイ……!」
皿を取って食べる。
「うまっ……!アブラガレイ……最高……!」
その勢いのまま——
カレイ7皿 炙りカレイ7皿
計14皿をたいらげた。
店員が驚いていた。
「お、お客様……カレイばかりですね……」
潤は満面の笑みで言った。
「アブラガレイが僕を呼んでるんです」
店員はそっと距離を取った。
◇締めにラーメン屋へ
満腹のはずなのに、潤は思った。
「……ラーメン食べたい」
そして入店した瞬間——潤は固まった。
あの女子高生がすでに座っていた。
以前、“高い位置から大量の胡椒を振りかけて両隣の客をくしゃみさせた女子高生”である。
潤は慎重に席を選んだ。
「……今日は遠くに座ろう……」
端に座る女子高生から4席離れた場所に座った。
そして——潤は見た。
女子高生が、また肩より高い位置に胡椒の瓶を掲げている。
潤は心の中で叫んだ。
(やっぱりその高さでいくの!?なんでそんなフォームなの!?)
女子高生は勢いよく振り始めた。
シャッ!シャッ!シャッ!シャッ!
胡椒が滝のように降り注ぐ。
隣の男性客が突然くしゃみした。
「ぶわっくしょん!!」
潤は遠くから見守りながらつぶやいた。
「……遠くに座って正解だった……僕は名探偵だ……」
女子高生は満足げにラーメンを食べ始めた。
◇帰り道
潤は夜風に当たりながら歩いた。
「今日は……アブラガレイ14皿食べて……ラーメン屋で名推理ができて……なんか……よい一日だったな……」




