潤、シュレーディンガーのお湯が成立しないことに気づく
風呂から上がった広瀬潤(39)は、髪を乾かしながら満足げだった。
「いや〜、入浴剤なかったけど……“シュレーディンガーのお湯”って考えたらなんか温泉っぽかったし……僕って天才……?」
そのまま布団に入り、電気を消した。
「よし、寝よう……」
◇しかし、寝る直前に気づいてしまう
布団の中で目を閉じた瞬間、脳内にひとつの疑問が浮かんだ。
「……ん?」
潤は目を開けた。
「……いや……入浴剤が入ってないのは……“明らか”だったよな……?」
布団の中で固まった。
「え……?じゃあ……“温泉であるかもしれないし、ないかもしれない”って状態じゃなくて……ただの“ない”じゃん……?」
潤は布団の中で起き上がった。
「……え?僕……普通のお湯を……温泉だと思い込んだだけ……?」
◇シュレーディンガーのお湯、崩壊
潤は天井を見つめた。
「……入浴剤が入ってないことは観測するまでもなく確定してた……つまり……“温泉である可能性”はゼロ……」
布団の中で頭を抱えた。
「え……?じゃあ僕……ただの湯船に入って……“温泉だ!”って言ってただけ……?」
潤は枕に顔を埋めた。
「うわぁぁぁぁぁ……恥ずかしい……自分で自分が恥ずかしい……」
◇もやもやが止まらない
潤は寝返りを打った。
「いや……でも……気分は温泉だったし……それはそれで……成立してたのでは……?」
また寝返り。
「いやいやいや……気分で温泉になるなら世の中の風呂全部が温泉じゃん……そんなわけない……」
また寝返り。
「でも……“気分が大事”って言うし……いやでも……現実はただの水道水……うわぁぁぁ……」
また寝返り。
「シュレーディンガーさんに申し訳ない……物理学者に謝りたい……」
また寝返り。
時計を見ると——2時間経っていた。
潤は布団の中でつぶやいた。
「……僕……こんなことで2時間も使って……?」
◇ようやく眠りにつく
もやもやが限界に達した潤は、最後にこう結論づけた。
「……もういいや……明日入浴剤買おう……それで全部解決だ……」
潤は静かに眠りについた。




