潤、水素水を買わされそうになる
4度目の婚活パーティ。広瀬潤(39)は、少し緊張しながら会場に入った。
「今日は……普通に話そう……壺もカレイも封印だ……」
潤は深呼吸した。
◇今回の相手は妙に健康志向
席に案内されると、向かいの女性がにこやかに話しかけてきた。
「広瀬さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
女性はすぐに潤の飲み物を見た。
「お水なんですね。健康に気を使ってるんですか?」
潤は首を振った。
「いえ、特にこだわりはないんです」
女性は目を輝かせた。
「水って大事ですよね!でも普通の水じゃダメなんですよ!」
潤は固まった。
「えっ……?」
◇水素水の話が始まる
女性はバッグから小さな冊子を取り出した。
「広瀬さん、水素水って知ってます?」
「えっ……なんとなく……?」
女性は勢いよく説明を始めた。
「水素水は体の中の悪いものを全部流してくれるんです!疲れも取れるし、美容にもいいし、運気も上がるんですよ!」
潤は困惑した。
「運気……?」
女性はさらに続けた。
「しかも今なら婚活パーティ特別価格で……」
潤はdéjàvuを感じた。
「……あれ……この流れ……なんか前にも……?」
◇ついに勧誘が始まる
女性は冊子を潤に差し出した。
「広瀬さん、これ飲んだら人生変わりますよ!水素水は普通の水とは違うんです!」
潤は冊子を見た。
『水素水スターターセット特別価格』
潤は心の中で叫んだ。
(また“特別価格”だ……!壺の次は水素水か……!)
女性はさらに畳みかけた。
「広瀬さん、あなたは優しい人だから……水素が必要なんです!」
「僕、優しいと水素が必要なんですか……?」
女性は真剣だった。
「はい。水素が足りないと運気が下がるんです!」
潤は完全に混乱した。
◇危うく買いそうになる潤
女性は冊子を潤の手に押しつけた。
「広瀬さん、今ならこのセットが……」
「えっ……あ……その……」
潤は財布に手を伸ばしかけた。
(いや……でも……水素って……そんなに必要なのか……?僕、最近疲れやすいし……水素が足りないのか……?)
女性は満面の笑み。
「広瀬さん、買いましょう!」
潤は危うく頷きそうになった。
◇しかし、奇跡的に回避する
その瞬間、スタッフが近づいてきた。
「すみません、その方……以前から“水素水の勧誘”で注意を受けてまして……」
女性は慌てて席を離れた。
潤は呆然とした。
「……また……危なかった……僕、もう少しで水素水を買うところだった……」
スタッフは優しく言った。
「お気をつけくださいね。婚活パーティで水素水は買わなくていいんです」
潤は深く頷いた。
◇帰宅
母が聞いた。
「潤、婚活どうだった?」
「水素水を買わされそうになった」
「潤、もう寝なさい」
父が即答した。
潤はため息をついた。
「壺の次は水素水か……婚活って……いろんなものが売られてくるんだな……」
潤は布団に入りながらつぶやいた。
「次は……何を売られるんだろう……数珠とかかな……」




