潤、“白い世界”の悲劇から救出される(?)
昼休みの白米だけ弁当事件をなんとか乗り切った潤は、午後の仕事に戻ると、机に突っ伏したまま動けなくなっていた。
「……自分で作った弁当なのに……おかずのタッパーをキッチンに置き忘れて……白米だけを持ってきた男になってしまった……しかも周りに店がなくて……唯一の総菜屋は定休日で……僕は……昼に白米だけを食べたんだ……」
その悲惨な顛末を、潤は佐伯に静かに語った。
佐伯はしばらく黙って聞いていたが、最後には深いため息をついた。
「……潤、それはもう……昼食として成立してないぞ……今日は俺がなんとかしてやる。仕事終わったら焼肉行こう。さすがに今日は肉を食わせてやる」
潤は顔を上げた。
「……焼肉……? 本当に……?」
佐伯はうなずいた。
「白米だけの昼を乗り越えたんだ。今日は肉を食べるべきだ」
潤の目に希望の光が戻った。
「……佐伯……ありがとう……僕は……ついにカルビにたどり着けるんだ……!」
◇仕事終わり、佐伯に連れられて店へ
夕方。佐伯は潤を連れて歩き出した。
「この先にうまい店があるんだ。今日はしっかり肉を食べよう」
潤は胸が高鳴った。
(……カルビ……ロース……赤身……どれから食べよう……白米だけの昼を乗り越えた僕には……肉の権利がある……!)
店の看板が見えてきた。
潤は目を輝かせた。
「佐伯……あれが……焼肉屋……?」
佐伯は自信満々に言った。
「おう……うまいぞ」
潤は看板を見つめた。
そこには大きく書かれていた。
『名物!マルチョウ・シマチョウ・ハツ・レバー』
潤は固まった。
「………………ホルモン屋じゃないか……」
佐伯は笑った。
「ホルモンも肉だし……カルビも……一応あるはず……」
潤は看板を見つめたまま動かない。
「……僕は……昼に白米だけを食べて……夜に焼肉を食べられると思ったら……ホルモン屋に連れてこられたんだ……どうして……どうして僕はカルビにたどり着けないんだ……?」
佐伯は肩を叩いた。
「潤……とりあえず入ろう。ホルモンもうまいぞ」
潤はゆっくりうなずいた。
「……わかった……でも……カルビも……頼むよ……」
こうして潤の“焼肉への道”は、白米弁当の悲劇を乗り越えたにもかかわらず、またしてもホルモン屋によって阻まれるのであった。




