潤、弁当箱を開けたら“白い世界”
その日の潤は、珍しく早起きして弁当を作った。
「今日は節約して、昼は自作弁当でいこう」
そんな前向きな気持ちでキッチンに立ち、ごはんを詰め、昨夜の残り物を小さなタッパーに入れ、満足げに弁当袋へしまった……つもりだった。
◇期待の弁当タイム
昼休み。公園のベンチに腰掛けた潤は弁当を膝に置き、深呼吸した。
「自分で作った弁当……なんかいいな……今日はちゃんと“弁当を食べている人”になれる……」
蓋を開けた。
次の瞬間、潤の表情が固まった。
弁当箱の中は——白い。どこまでも白い。
ごはんが、ただただ広がっている。
「………………え?」
潤は弁当箱をそっと傾けた。どこかにおかずが隠れているのではないかと期待して。
しかし、どこまで傾けても白い。白い世界が続く。
「……おかず……ない……? いやいやいやいや……自分で作ったんだよ……? おかずを入れたタッパーもちゃんと用意したんだよ……? なんで……なんでごはんしかないんだ……?」
潤は思い出した。
朝、弁当袋に入れたのは——ごはんの弁当箱だけ。
おかずのタッパーは、キッチンのカウンターに置いたまま。
「……僕は……ああ……おかずを忘れたんだ……」
◇店を探すも絶望の連続
潤は立ち上がった。
「……おかずを買いに行こう……まだ間に合う……」
しかし周辺は、飲食店がほとんどない地域だった。
コンビニもスーパーもない。
「……なんでこんなに何もないんだ……おかず……どこ……?」
唯一、昔ながらの総菜屋が一軒だけある。潤は希望を込めて向かった。
店の前に貼り紙があった。
『本日定休日』
潤は貼り紙を見つめたまま動けなくなった。
「……僕は……おかずを忘れ……店が定休日の世界にいるんだ……どうして……。どうして僕は肉にたどり着けないんだ……?」
◇白米だけの昼食
潤は静かに公園に戻り、白米だけを食べ始めた。
一口目「……白い……」
二口目「……味が……ない……」
三口目「……僕は……何を食べているんだ……?」
白米だけの弁当は、潤の心に静かにダメージを与え続けた。
こうして潤の“焼肉への道”は、自作弁当の白米によってさらに遠ざかるのであった。




