潤、プロ野球選手を今から目指そうとして佐伯を困らせる
雑誌をめくっていた潤は、あるページで手を止めた。そこにはプロ野球選手のインタビュー記事と、堂々とした年俸の数字。
「……年俸1億8000万円……すごい……焼肉……毎日食べられるじゃないか……いや、焼肉屋を買える……!」
潤は雑誌を閉じ、真剣な顔で佐伯のもとへ向かった。
◇潤の突然の相談
佐伯がコーヒーを飲んでいる横に、潤がそっと座った。妙に真剣な表情だ。
「佐伯……ちょっと相談があるんだ」
佐伯は嫌な予感を覚えた。潤が真剣な顔をしているときは、だいたいろくなことがない。
「どうしたんだ」
潤は深呼吸して言った。
「……僕、プロ野球選手になれると思うか……?」
佐伯はコーヒーを吹きかけた。
◇佐伯の困惑
「いやいやいやいや……潤、野球やったことあるのか……?」
潤はうなずいた。
「もちろん、全くの未経験だ。でも……年俸を見たら……なんか……やりたくなってきて……」
佐伯は頭を抱えた。
「未経験でプロは無理だろ……そもそもボール投げられるのか……?」
潤は胸を張った。
「投げられるよ。小学校のとき、ドッジボールで……一度だけ……当てたことがある」
佐伯は遠い目をした。
「それは……プロ野球とは関係ないと思うぞ……」
◇潤の本音が漏れる
潤は雑誌を見つめながらつぶやいた。
「だって……プロになれば……カルビを毎日食べられるんだよ……焼肉に困らない人生なんだよ……僕は……焼肉にたどり着けない人生を歩んでるんだ……プロ野球選手になれば……焼肉にたどり着ける気がして……」
佐伯は悟った。
「ああ……また焼肉の話か……潤、プロ野球選手になるより、普通に焼肉屋に行くほうが早いぞ……」
潤は静かにうつむいた。
「……でも……俺が焼肉を食べようとすると……ホルモンになったり……ハムになったり……カレイになったり……トイレットペーパーになったりするんだよ……もう……プロ野球選手になるしか……」
佐伯は深くため息をついた。
「潤……まずはキャッチボールから始めようか……焼肉のためにプロを目指すのは……やめておけ……」
潤は真剣にうなずいた。
「……わかった……じゃあまずはキャッチボールから……それでプロになって……カルビを……」
佐伯はそっと潤の肩を叩いた。
「焼肉は普通に行けば食べられるからな……」
こうして潤の“焼肉への道”は、プロ野球選手への無謀な挑戦によってまた遠ざかるのであった。




