潤、東京バナナを買うはずがまるごとバナナを配布する
広瀬潤(39)は、ひとりで東京観光に来ていた。母からのLINEが来ていた。
「潤、東京バナナを買ってきてちょうだい。配りやすいから職場用にもいくつか買ってきなさい」
潤は頷いた。
「よし……東京バナナだな……東京といえば東京バナナ……これはもう義務だ……」
◇東京のドン・キホーテへ
潤はお土産も置くディスカウントストア、ドン・キホーテにやってきた。パッケージがずらり。
潤は圧倒された。
「うわぁ……東京土産ってこんなに種類あるのか……?」
そのとき、潤の視界に入ったのは——
大きく“バナナ”と書かれた黄色いパッケージ。
潤は近づいた。
「これだ……これが東京バナナだ……!」
潤は迷わずカゴに入れた。母の言葉を思い出し、職場用に5本追加した。
「よし……任務完了だ……!」
◇職場で配る潤
翌日。潤は職場にまるごとバナナを持っていった。
「みなさん、東京土産です!」
同僚たちは驚いた。
「えっ……でかっ……」
「これ……一本ずつ……?」
「潤さん、太っ腹ですね……!」
潤は胸を張った。
「東京バナナです!」
同僚たちは首をかしげた。
「……これ、東京バナナ……?」
「いや……これはまるごとバナナ……」
「でもおいしいからいいか!」
職場はまるごとバナナ祭りになった。
潤は満足げだった。
「母さんも喜ぶだろうな……東京バナナをちゃんと買ったし……」
◇帰宅して冷蔵庫を開ける母
その夜。母が冷蔵庫を開けた。
「潤、東京バナナはどこにしまったの?」
潤は自信満々で袋を渡した。
母は袋を開けた。
『まるごとバナナ』
母は固まった。
「……潤?」
「うん、東京バナナだよ」
「潤……これは……東京バナナじゃないわよ……」
潤は目をこすった。
「え……?バナナって書いてあるし……東京で買ったし……これが東京バナナじゃ……?」
母はパッケージを指差した。
そこには、まるごとバナナと記載されていた。
「あっ……」
潤は呆然とした。
「僕……まるごとバナナを……職場に……大量に配った……?」
母はため息をついた。
「潤、あなた……まるごとバナナは全国区よ……」
潤は椅子に座り込んだ。
◇しかし潤は立ち直る
潤はまるごとバナナを一本取り出した。
「……まあ……これはこれで……」
一口食べた。
「……うまっ……!」
潤はまるごとバナナを食べながら、東京観光の思い出をかみしめた。




