潤、8億円の夢を見てスクラッチに散る
広瀬潤(39)は、昼休みに同僚が言った一言を聞き逃さなかった。
「今年の年末ジャンボ、1等8億円らしいぞ」
「……8億円……?8億円あったら……マコガレイ食べ放題の人生……いや、魚屋を買える……!」
潤は完全に億万長者の未来を見てしまった。その勢いのまま宝くじ売り場へ走り、10枚の宝くじを購入した。
◇しかし、帰宅して気づく
「さあ……8億円の未来を開封するか……」
封を開けた瞬間、潤は固まった。
スクラッチくじ(1等:200万円)
「………………え?」
もう一度見る。
スクラッチくじ(1等:200万円)
「………………え?」
三度見する。
スクラッチくじ(1等:200万円)
「8億円じゃ……ない……200万円……?しかもスクラッチ……?抽選会……ない……?僕……抽選前から外れてる……?」
潤はソファに沈み込んだ。
「……僕は……8億円を夢見て……1等200万円のスクラッチを10枚買った男……もう……結果を見る前から負けてる……」
(とりあえず削るか…… )
「……まあ……削るだけ削るか……せめて……3等くらい……」
1枚目→ハズレ
2枚目→ハズレ
3枚目→ハズレ
(まあ……10枚あるし……)
4枚目→ハズレ5枚目→ハズレ6枚目→ハズレ7枚目→ハズレ8枚目→ハズレ9枚目→ハズレ
「………………え?」
最後の10枚目を震える手で削る。
10枚目→5等(200円)
潤「………………200円……?」
◇潤の心の声
(僕は……8億円を夢見て……200円を手に入れたんだ……差し引き……マイナス1,800円……いや、夢の損失を含めたら……僕の人生……カレイに続いて……宝くじにも裏切られるのか……?)
こうして潤の“億万長者への道”は、阻まれるのであった。




