潤と佐伯、焼きガキ派に移行する
この前、道の駅に来てから2週間。広瀬潤(39)と佐伯は、また同じ道の駅に来ていた。
ふたりともすっかり元気になり、前回の“海の怒り”は笑い話になっていた。
佐伯が言った。
「潤、今日は焼きガキだけにしような」
「もちろんだよ。僕はもう……海に沈むのはこりごりだ……」
ふたりはカキ小屋へ向かった。
◇焼きガキだけを即決するふたり
店員が声をかける。
「いらっしゃいませ!生ガキもおすすめですよ!」
潤と佐伯は、まるで打ち合わせしたかのように同時に言った。
「焼きガキでお願いします」
「焼きガキだけでお願いします」
店員は笑った。
「おふたり、迷いがないですね」
潤は胸を張った。
「焼きガキは……海の恵みを“穏やかに”楽しめるんです」
佐伯も頷いた。
「俺たちはもう……“焼きガキ派”に進化したんだよ」
◇焼きガキの香りにテンションが上がる
炭火の上でカキがじゅうじゅうと音を立てる。
潤は目を輝かせた。
「この香ばしさ……この安心感……これだよ……僕の求めていた海は……!」
佐伯も満足げだった。
「焼きガキは裏切らないな。穏やかな海を感じる」
ふたりは焼きガキを堪能した。
◇近くの席で生ガキを食べる人が現れる
そのとき、近くの席から声が聞こえた。
「うまっ!生ガキ最高!」
潤はちらっと見た。佐伯もちらっと見た。
そこには、レモンを絞って生ガキをつるんと食べる人がいた。
潤は一瞬だけ目を細めた。
「……生ガキ……以前の僕なら……揺れていたかもしれない……」
佐伯もつぶやいた。
「……海そのもの……確かにうまいんだよな……」
しかしふたりはすぐに焼きガキへ視線を戻した。
潤は言った。
「でも……僕はもう焼きガキで十分だよ」
佐伯も言った。
「俺もだ。生ガキは……またいつかでいい」
ふたりは全く揺れなかった。
◇近くの席でビールを飲む人が現れる
さらに別の席から声が聞こえた。
「焼きガキにはビールだよな〜!」
ぷしゅっと缶を開ける音。黄金色の液体がグラスに注がれる。
潤は一瞬だけそちらを見た。
「……ビール……焼きガキと絶対合うやつだ……」
佐伯もちらっと見た。
「……うまそうだな……」
しかしふたりはすぐに視線を戻した。
潤は言った。
「僕たち……車で来てるから……見なかったことにしよう」
佐伯も言った。
「うん、見なかったことにしよう」
ふたりは焼きガキだけを黙々と楽しんだ。
◇焼きガキを堪能するふたり
潤は焼きガキを食べながら言った。
「焼きガキは……海の恵みを……“優しい形”で届けてくれる……」
佐伯も頷いた。
「生ガキは……海の“本気”だからな。あの本気は出してくれなくていい」
ふたりは穏やかな気持ちで焼きガキを楽しんだ。




