↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/67

潤、今度はトイレットペーパーに阻まれる

 広瀬潤(39)は、ここ最近ずっと焼肉に振り回されていた。ホルモンに阻まれ、カレイに吸い寄せられ、ハムは在庫切れ、宝くじは200円。


「……もういい……ふるさと納税でブランド牛を頼んで、家でゆっくりカルビを焼くんだ……!」


 潤はパソコンを開き、ふるさと納税ポータルサイトで“ブランド牛”のページを食い入るように見つめた。


 ◇ついにカルビの未来が見えた


「これだ……!A5ランク黒毛和牛カルビ1.2kg……!これなら絶対焼肉だ……ホルモンでもハムでもない……純粋な焼肉……!」


 潤は申し込みボタンに手を伸ばした。


 その瞬間——


「潤、ふるさと納税するならトイレットペーパーにしてちょうだい」


 母の声が聞こえた。


「………………え?」


 父が続ける。


「うち、最近トイレットペーパーの減りが早いんだよ。肉より紙のほうが助かる」


「いやいやいやいや……僕は今、カルビを選ぼうとしてたんだよ……紙じゃなくて肉だよ……焼肉だよ……!」


「紙のほうが実用的でしょう?肉はすぐなくなるけど、紙は残るわよ」


「それに、トイレットペーパーの返礼品って量が多いんだ。家計に優しいぞ」


(カルビも普通に買うより家計に優しいはず……だけど……)


 ◇しぶしぶ応じる潤


「……じゃあ……トイレットペーパーに……します……」


「助かるわ〜」


「いい選択だぞ、潤」


(僕は……A5ランク黒毛和牛カルビを……トイレットペーパーに変えた男……)


 潤は震える指で“トイレットペーパー128ロール”を選択した。


 ◇数日後


 巨大な段ボールが届いた。両親が言った。


「わあ、助かるわねえ!これでしばらく安心だわ!」


「潤、いい返礼品選んだな」


(お肉は……?)


 段ボールを開けても、そこにあるのは白いロールの山。


「……僕は……焼肉を求めて……紙を手に入れたんだ……どうして……どうして僕は肉にたどり着けないんだ……?」


 ◇夜


 佐伯からメッセージが届いた。


「潤、今日飲みに行くか?いいホルモン屋があって——」


(ホルモンの無限ループ……)


「佐伯……僕は……カルビを選ぼうとして……トイレットペーパーを手に入れた男なんだ……今日は静かにしていたい……」


「何を言ってるんだ?」


 こうして潤の“焼肉への道”は、ふるさと納税の返礼品によってまた遠ざかるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。