潤、ハムステーキを求めて“空振り”する
広瀬潤(39)は、ここ数日ずっと焼肉に振り回されていた。ホルモンやハムステーキに阻まれ、カレイに吸い寄せられた。
そんな潤が、ふと思い出した。
「……そういえば昨日のハムステーキ……あれ……めちゃくちゃ美味しかったな……焼肉じゃないけど……あれはあれで……良かった……よし、今日はハムステーキを食べよう……!」
潤は実家のキッチンへ向かい、母に声をかけた。
◇ハムステーキ再び(のはず)
潤「母さん、今日さ……またハムステーキ食べたいんだよね……」
母「あら、ハムステーキ?昨日のやつ、美味しかったでしょう?」
潤「うん!あれ、すごく良かった!焼肉じゃないけど……なんか……心が満たされたんだ……だから今日も——」
母「あれ、もう使い切ったわよ」
潤「………………え?」
◇潤の心の声
(いやいやいやいや……もともとあんなに分厚かったじゃないか……レンガみたいだったじゃないか……あれを……全部使い切った……?そんな……そんなはずは……)
「母さん、昨日のハム……、まだ少しは残ってるんじゃ……?」
「残ってないわよ。昨日のステーキで全部使ったもの。一枚を分厚くしたからねえ」
「じゃ、じゃあ……今日のハムステーキは……?」
「できないわよ。ハムがないんだから」
「………………ハムが……ない……?」
◇ハムステーキの幻影
潤は昨日のハムステーキを思い出した。
ジュワァァァァ……あの音。あの照り。あの分厚さ。
「……僕は……もう一度あれを食べたかった……焼肉にたどり着けないなら……せめてハムステーキを……なのに……ハムすら……ない……僕の人生……どうしてこうも肉に嫌われるんだ……?」
「またお歳暮でもらったら作るわよ」
(それいつだよ……)
こうして潤の“焼肉への道”は、ハムステーキの在庫切れによってまた遠ざかるのであった。




