潤、婚活パーティで壺を買わされそうになる
3度目の婚活パーティ。広瀬潤(39)は、少し緊張しながら会場に入った。
「今日こそ……いい出会いがあるはずだ……カレイの話は封印しよう……」
父からの事前アドバイスが効いていた。
◇不穏な相手と遭遇
席に案内されると、向かいに座った女性がにこやかに話しかけてきた。
「広瀬さん、今日はよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
次の瞬間——
「広瀬さん……あなた、このままだと不幸になりますよ」
潤は固まった。
「えっ……?」
「あなたの顔に“先祖の祟り”が出ています」
「えっ……?」
女性は真剣な顔で続けた。
「このままでは仕事も恋愛も全部ダメになります」
「えっ……?」
潤は“えっ”しか言えなかった。
◇霊的原因を語り始める相手
「広瀬さん、これは霊的な問題です。普通の人には見えませんが、私には見えるんです」
潤は困惑した。
「えっと……僕、郵便配達なんですけど……霊的な問題って……郵便にも影響しますか?」
「します。郵便物が風で飛んでいきます」
「それは困ります」
女性はさらに続けた。
「でも安心してください。この問題を解決できるたった一つの方法があります」
潤は少し希望を持った。
「えっ、あるんですか?」
「はい。この壺で救われます」
潤は椅子からずり落ちそうになった。
◇壺の説明が始まる
女性はバッグから小さなパンフレットを取り出した。
「この壺は特別な力を持っています。先祖の祟りを浄化し、運気を上げ、人生を好転させます」
「壺が……?」
「はい。しかも今なら婚活パーティ特別価格で……」
「婚活パーティ特別価格……?」
潤は頭を抱えた。
「えっと……壺って……なにができますか?」
「買うだけで効果があります」
「じゃあ……なにかを入れたり……」
「しません」
「じゃあ……何に使うんですか?」
「祟りを浄化します」
「浄化……」
潤は完全に混乱していた。
◇危うく買いそうになる潤
女性はさらに畳みかけた。
「広瀬さん、あなたは優しい人です。だからこそ、祟りが溜まりやすいんです」
「僕、祟り溜まりやすいんですか……?」
「はい。壺が必要です」
「壺……」
潤はなぜか少し納得しかけていた。
「確かに……最近雨に降られそうで降られなかったり……カレイが売ってなかったり……これは祟りかもしれない……」
女性は満面の笑み。
「そうです!壺が必要なんです!」
潤は財布に手を伸ばしかけた。
◇しかし、奇跡的に回避する
その瞬間、スタッフが近づいてきた。
「すみません、その方……以前から“壺の勧誘”で注意を受けてまして……」
女性は慌てて席を離れた。
潤は呆然とした。
「危なかった……僕、もう少しで壺を買うところだった……」
◇帰宅
母が聞いた。
「潤、婚活どうだった?」
「壺を買わされそうになった」
「潤、もう寝なさい」
父が即答した。
潤はため息をつきながらつぶやいた。
「今日の婚活は……“壺を買わされそうになってギリギリ回避する”思い出ができたんだ……」
こうして潤の婚活3回目は、またしても奇妙な事件とともに幕を閉じたのであった。




