潤、魚肉ソーセージに裏切られる
仕事帰り。広瀬潤(39)はスーパーの食品売り場を歩いていた。
「今日は……軽くタンパク質を補給したい……」
ふと目に入ったのは、鮮やかなパッケージの魚肉ソーセージ。
潤は立ち止まった。
「魚肉……白身魚……白身魚といえば……マコガレイに違いない……!」
潤は魚肉ソーセージを手に取り、満足げにうなずいた。
「これを食べれば……手軽にマコガレイを摂取できる……なんて便利な時代なんだ……!」
◇帰宅後、調べてみる
家に帰り、母が聞いた。
「潤、それ何?」
「魚肉ソーセージ。マコガレイが手軽に食べられるんだよ」
「潤、それ本当にマコガレイなの?」
「もちろんだよ。白身魚だからね」
父が新聞をめくりながら言った。
「潤、調べてみろよ」
「調べるまでもないよ。白身魚=マコガレイなんだから」
「潤、いいから調べろ」
潤はスマホを取り出し、魚肉ソーセージの原材料を検索した。
そして固まった。
◇主原料:スケトウダラ
「……スケトウダラ……?」
「潤、どうした」
「魚肉ソーセージの主原料……スケトウダラって書いてある……」
「そりゃそうだろ」
潤は震えた。
「僕は……スケトウダラを……マコガレイだと思い込んで買ってきたのか……」
「潤、またやったな」
潤は魚肉ソーセージを見つめた。
「この白身……この食感……この便利さ……全部……スケトウダラだったのか……」
母が優しく言った。
「潤、スケトウダラも美味しいわよ」
◇しかし潤は立ち直る
潤は突然、顔を上げた。
「いや……逆に考えるんだ……」
「どうしたの」
「僕は今まで、スケトウダラをマコガレイだと思い込んで食べてきた……」
「そうね」
「つまり、“精神的お買い得理論”が成立するんだ!」
「また言ってる」
潤は魚肉ソーセージを握りしめた。
◇夜、潤は満足する
潤は魚肉ソーセージを食べながらつぶやいた。
「うん……これは……スケトウダラだけど……僕の心の中では……マコガレイなんだ……」
「潤、もう寝なさい」
父が即答した。
潤は満足げに悔しがった。
「今日は……“マコガレイだと思わせてきたスケトウダラに裏切られる日”だった……シュレーディンガーのカレイのままでよかったのに……」




