潤、和太鼓にもマコガレイを見つける
ある休日。広瀬潤(39)は、佐伯に誘われて地元ホールの和太鼓演奏会へ行くことになった。
「潤、たまには文化的なものを見ようぜ」
「僕、太鼓とか興味ないんだけど……」
「いいから行くぞ。カレイの話は禁止な」
「えっ……」
潤は不満げだったが、佐伯に半ば強制されてホールへ向かった。
◇開演。潤、衝撃を受ける
ステージに並ぶ巨大な太鼓。照明が落ち、演奏者が構えた瞬間——
ドォォォォン!!
潤は目を見開いた。
「佐伯……すごい……」
「だろ?」
「体に響く……胸に響く……脳に響く……」
「太鼓だからな」
潤は完全に引き込まれていた。
演奏者たちがリズムを刻むたびに、潤は身体を揺らし、太鼓の音がホール全体を包むたびに、潤のテンションは上がっていった。
「佐伯……太鼓って……こんなにすごいんだな……」
「潤、楽しんでるじゃないか」
「うん……なんか……釣りみたいだ……」
「言うな」
◇終演後、潤の“気づき”が爆発する
演奏会が終わり、ロビーに出た潤は興奮冷めやらぬ様子で佐伯に言った。
「佐伯……僕は気づいてしまったんだ」
「嫌な予感しかしない」
潤は胸を張った。
「太鼓の演奏って、マコガレイ釣りに似てるんだよ!」
「やっぱりだ」
潤は止まらない。
◇潤、太鼓=カレイ理論を展開する
「まず、太鼓の音って“いつ来るかわからない強烈な一打”があるだろ?」
「まあ、あるな」
「カレイ釣りも“いつ来るかわからない強烈なアタリ”があるんだよ!」
潤はさらに続けた。
「そして、太鼓の演奏者はリズムを読みながら叩くだろ?」
「まあ、そうだな」
「釣り人も海の流れを読みながら仕掛けを落とすんだよ!」
「潤、それは無理やりだよ」
潤は興奮していた。
「つまり、太鼓の演奏は……“音のマコガレイ釣り”なんだよ!」
「狭いジャンルよ」
◇佐伯、ついにあきらめる
佐伯は深いため息をついた。
「潤、もう帰ろう」
「今日の演奏会は……“和太鼓版シュレーディンガーのカレイ”だったんだ……」
「潤、もう帰ろう」
◇帰宅
母が玄関で言った。
「潤、太鼓どうだった?」
「母さん……太鼓は……マコガレイ釣りだったよ……」
「潤、もう寝なさい」
父が即答した。
潤は満足げに笑った。
こうして潤の“カレイ哲学”は、ついに和太鼓の世界にまで進出したのであった。




