潤、半導体にもマコガレイを見る
ある日の夕方。郵便配達を終えた広瀬潤(39)は、職場の休憩室で同僚の佐伯がスマホで動画を見ているのを覗き込んだ。
「佐伯、それ何の動画?」
「半導体の解説動画だよ。最近ニュースでもよく出るだろ」
「半導体……?」
佐伯は軽く説明した。
「半導体ってのは、電気を通したり通さなかったりするんだよ。導体にも絶縁体にもなる、みたいな性質があってさ」
「へぇ〜……導体にも絶縁体にもなる……?」
潤はその瞬間、目を見開いた。
「佐伯……それって……シュレーディンガーのカレイと同じじゃないか!」
「いや、違うよ」
◇潤、暴走開始
潤は勢いよく語り始めた。
「だって、半導体は“電気を通す状態”と“通さない状態”を同時に持つんだろ?」
「まあ、条件によって変わるけど……」
「つまり、半導体は“導体であり導体でない状態”を同時に持つ!これはまさに……シュレーディンガーのカレイと同じ構造だ!」
「構造って何だよ」
潤は止まらない。
「僕のカレイ理論では、釣り上げるまで“マコガレイでありマコガレイでない状態”なんだよ。半導体も“導体であり導体でない”んだよ。つまり、一緒なんだよ!」
「なにがだよ」
◇潤、科学をカレイ化する
潤はさらに深く語り始めた。
「佐伯、半導体ってすごいよね。電子が流れるか流れないか、条件次第で変わるんだよね?」
「まあ、そうだな」
「つまり、マコガレイもまた“半導体かもしれないし半導体じゃないかもしれない”状態なんだよ」
「カレイは半導体じゃないよ」
潤は机を叩いた。
「僕は確信したんだ。半導体は“電子版シュレーディンガーのカレイ”なんだよ!」
「そんな概念いらないよ」
◇潤、理論をまとめる
潤は胸を張って宣言した。
「僕は新しい学問を発明した。その名も……“半導体カレイ論”だ!」
「やめろ」
「電子工学と魚類学を融合した新しい学問だ!」
「融合しなくていいよ」
潤は満足げに頷いた。
「半導体が導体にも絶縁体にもなるように、カレイもマコガレイにもマコガレイじゃない魚にもなる。つまり、世界は全部“シュレーディンガーのカレイ”なんだよ」
「潤、もう帰ろう」
◇帰宅
家に帰ると、母が聞いた。
「潤、今日は仕事どうだった?」
「半導体がカレイだって気づいたよ」
「潤、もう寝なさい」
父が即答した。
潤は夜空を見上げながらつぶやいた。
「電子も星もカレイも……全部確定しない……世界は“シュレーディンガーのカレイ”でできているんだ……」
こうして潤のカレイ哲学は、ついに半導体工学にまで進出したのであった。




