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距離が近すぎる人

第2話です。


今回は中井さんとの距離が少し近づく回になります。

軽い会話が多めですが、その中で莉愛の気持ちの変化も感じてもらえたら嬉しいです。


引き続き、ゆっくりと関係が動いていきます。

「莉愛ー、おは。今日も生きててえらい」


朝、教室に入った瞬間、そんな声が飛んできた。


「……なにそれ」


「いや、朝から学校来てる時点で勝ち組でしょ。はい論破」


中井春は、いつもの調子で笑っている。


最初に会ったときと同じで、距離が近い。

物理的にも、精神的にも。


「てかさ、昨日なにしてた?課題やった?」


「……やってない」


「詰みじゃん。ガチで終わってて草」


そう言いながら、当たり前みたいに私の席の隣に腰掛ける。


距離が、近い。


肩が触れそうで触れないくらいの位置。

ほんの少し動けば、簡単に触れてしまいそうな距離。


「……ちょっと近くない?」


「え、そう?気のせいじゃね」


全然気のせいじゃない。


でも彼女は、まったく気にしていない様子でノートを広げた。


「ほら、ここやばいよ。普通に難問すぎん?」


顔を寄せてくる。


近い。


思っていたよりも、ずっと。


ふわっと、シャンプーみたいな匂いがした。


その瞬間、心臓が一気に跳ねる。


「……莉愛?」


「え?」


「さっきから固まってね?フリーズしてんだけど」


「してない」


「してるって。顔ちょい赤いし」


「……うるさい」


なんでこんなことで、こんなに意識してるんだろう。


ただ近いだけ。

ただ隣にいるだけ。


それなのに。


「まあいいや。莉愛ってさ、なんか面白いよね」


「……どこが」


「なんかずっと考えてそうな顔してるくせに、たまにバグるじゃん」


「バグってない」


「いや今バグってたって。完全に」


楽しそうに笑う。


その顔を見ていると、少しだけ息が楽になる。


不思議だった。


誰かといるとき、こんなふうに思ったことなんてなかったのに。


「ね、今日一緒にお昼食べよ」


唐突に言われて、言葉に詰まる。


「……別にいいけど」


「よっしゃ確定。逃げんなよ?」


「逃げないし」


「フラグじゃんそれ」


また笑う。


その無邪気さに、少しだけ救われている自分がいる。


――こんなふうに、誰かといるのは久しぶりだ。


昼休み。


中井に連れられるようにして、教室の隅の席に座る。


そこには、知らない顔が何人かいた。


「紹介するわ。こっち莉愛。昨日言ってた子」


「え、あの?」「あー例の!」


一斉に視線が集まる。


少しだけ、息が詰まる。


けれど。


「大丈夫大丈夫、この人ら全員ただのオタクだから」


「ちょっと春!?」


「雑すぎん?」


軽い調子で笑いながら、中井は場の空気を一気に和らげた。


そのまま、自然に会話に引き込まれていく。


気づけば、少しだけ笑っている自分がいた。


――ああ。


こういうの、嫌いじゃないかもしれない。


ふと、視線を感じて顔を上げる。


教室の入口の方。


そこに、一人の女子が立っていた。


目が合う。


見覚えのある顔。


「……山内、ルナ」


思わず、名前が口からこぼれる。


彼女は一瞬だけ驚いたように目を見開いて、

それから、少しだけ困ったように笑った。


「……久しぶり」


小さく、そう言った。


その声を聞いた瞬間、胸の奥がわずかに揺れる。


気まずさは、ある。

でも――それだけじゃない。


「うん……久しぶり」


自然に、言葉が出た。


中学の頃よりも、少しだけ軽い空気。


ほんの少しだけ、距離が縮まった気がした。


「莉愛?知り合い?」


後ろから中井の声がする。


「……うん。中学、同じクラスだった」


「まじか。じゃあ仲間じゃん。今度一緒に昼食べよーぜ」


軽い調子でそう言う中井に、ルナは少し戸惑ったように目を伏せて、


「……いいの?」


と、小さく聞いた。


「全然よゆー。むしろウェルカムなんだが」


即答だった。


そのやり取りを見て、思わず少しだけ笑ってしまう。


あの頃とは、少し違うかもしれない。


そんな予感が、胸の奥に静かに広がっていった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


中井さんを中心に、少しずつ莉愛の居場所が広がってきました。

一方で、ラストに登場した山内ルナとの関係もこれから動いていきます。


次回は中学時代の空気や、2人の距離感にも触れていく予定です。


よければ引き続き読んでいただけると嬉しいです

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