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デスバトル  作者: 一宮 沙耶


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6話 生き残りバトル

「リーダー候補者どうしで戦っていただきます。生存者は一人です。」


三宅の声が、静かに響いた。モニターに映るのは、私ともう一人。桜井。


「やらせる気なの?」

「はい。」


迷いはなかった。


「どちらかが生き残ります。その人が、我々のリーダーになります。」


空気が張り詰める。桜井は、何も言わなかった。ただ、こっちを見ている。

その目は、冷たい。感情がない。最初から、分かっていたみたいに。


「ねえ・・・。」


私は、少しだけ声を落とす。


「これ、回避できないの?」


桜井は一瞬だけ考えて、首を横に振った。


「無理。」


それだけだった。


「ここは、そういう場所だから。」


理解する。これは試験じゃない。選別。不要な方を消すだけの。


「そうなのね。」


息を吐く。覚悟は、もうできている。


「開始します。」


その瞬間、桜井が消えた。速い。視界から完全に消える。

直後、衝撃。体が吹き飛ぶ。壁に叩きつけられる。

息が詰まる。でも、意識は途切れない。


「遅いね。」


どこからか声。


「それでもリーダーになるつもりなの?」


挑発。でも、乗らない。ゆっくり立ち上がる。視界を広げる。呼吸を整える。

焦ってない。自分でも分かる。心が、妙に静かなまま。


「来ないの?」


桜井の声。少しだけ苛立ちが混じる。


「怖い?」

「違うわ。」


小さく答える。


「考えてるだけ。」


一歩、踏み出す。わざと、ゆっくり。隙を見せる。誘う。

来た。今度は読めた。視線のズレ。床のわずかな音。そこにいる。

振り向く。同時に手を伸ばす。触れる。一瞬だけ、思考が流れ込む。


冷たい。何もない。空っぽに近い。


「やっぱり。」


思わず呟く。桜井が距離を取る。


「何が?」

「あなたは、誰も信じてないでしょう。」


沈黙。ほんの一瞬だけ、目が揺れた。


「だから弱いのよ。」


はっきりと言う。空気が変わる。


「何それ?」


声が低くなる。


「意味が分からない。」

「そうでしょうね。」


一歩、近づく。


「あなたは、全部一人でやろうとしてる。」


桜井の目が細くなる。


「それのどこが悪いの?」

「全部よ。」


言い切る。


「ここは組織だもの。一人で完結する人は、できることが狭くなる。」


その瞬間、桜井の表情が、はっきりと歪んだ。


「ふざけないで。能力が低い人は足手纏い。あなたも、そう思っているでしょう。」


初めて、感情が出る。怒り。否定。


「信じたら裏切られるだけでしょう。」


その言葉で、確信した。



「あなたは、見捨てられたのね。」


沈黙。次の瞬間、桜井が突っ込んでくる。速い。今までで一番。

でも見える。動きが荒い。焦っている。終わりね。

最小限の動きで避ける。そして、触れる。深く潜る。


見える。過去、任務、そして誰も助けなかった瞬間。

そういうことね。完全に、孤立していた。最初からずっと。


「違う!」


桜井が叫ぶ。


「私は、一人で完璧にやってきた。」

「違う。」


遮る。


「一人だったんじゃない。」


静かに言う。


「誰も、あなたについてこなかっただけ。」


その瞬間、メンバー全員の銃口が桜井に向けられる。

誰もが桜井を見捨てている。


否定できない言葉。その隙で十分だった。

意識を押し込む。深く。確実に。桜井の体から力が抜ける。

崩れ落ちる。動かない。静寂。


「終わりね。」


息を吐く。足元に、桜井。さっきまで戦っていた相手。同じ場所にいた存在。


「ねえ・・・。」


小さく呟く。


「誰か、一人くらい信じてれば・・・。」


答えはない。でも、結果が全て。

桜井が私の顔を憎む。そして叫んだ。


「あなたの勝ちね。さあ、殺しなさい。」

「私は、あなたを殺したいなんて思ったことはない。でも、メンバーの総意で私をリーダーにするということのようだから、リーダーには私が就任する。メンバーの誰もが、あなたをリーダーとして認めていないことも分かったから。」


メンバーは全員、私を笑顔で包み込む。


「その上で、あなたは、サブリーダーとして私の参謀になってくれないかしら。今回も、とても優秀だと思ったわ。どうかしら。」

「お前の下で働くなんて断る。私はね、男性のときから、ずっとトップを目指してきた。二番手になるくらいなら殺してもらいたい。」

「そういうことなら、仕方がないわね。」


貧しい心までは変えることができない。

いくら多くのことを経験しても、女性になっても。

特に残虐な性格は変えることができない。


私には、人を信じる力、最悪を見通す力がある。

そして、限界を飛び越えることができた。女性になったことで。

人々の苦悩も分かる。リスペクトと感謝の気持ちを持てる。


プライドも捨てた。自分の欠点を誰にでも明らかにできる。

周りの人は、そんな私に心を開いてくれる。

同じ方向に向けて進んでいくことができる。


この女性に欠けていたのは、そういう資質。

誰もが手下だと思う。自分は最高権力者だと思い上がる。

誰も信じない。自分だけで行動する。

そんな人ができることは、たかが知れている。


この組織は私が守っていく。

人類の更なる成長に身を捧げていく。この組織を通じて。

それが私の生まれた意味。


私が手を前に振った時、一斉に銃声が鳴り響く。

一緒に、よりよい世界を目指したかったのに残念。

目の前には、濁った目の女性が血だらけで横たわっていた。


最近は、人を殺しているときだけ、心が楽になる。罪悪感はほとんど残っていない。

私は、どうしてしまったのかしら。

この前まで、罪悪感に押しつぶされそうだったのに。


そういえば、罪悪感、そんな言葉も忘れていた。

非日常が日常化して、感情が麻痺してしまったのかもしれない。

こんな姿を、妻には見せられない。この体も。


ただ、その時、ふと妻の違和感を感じた。

あんな完璧な女性が、どうして平凡な私と結婚したのか?

何か狙いがあったのかしら?


女性になり、研ぎ澄まされた感覚が違和感を伝えている。

いえ、妻は素晴らしい人。疑うなんてとんでもない。


「勝者が確定しました。」


三宅の声が、静かに響く。


「やはり、あなたでしたね。」


その言葉に、ほんの少しだけ、引っかかる。


「やはり?」


問い返す。三宅は、わずかに微笑んだ。


「ええ。想定通りです。」


想定。その言葉が、妙に重く響く。


「どういう意味?」


空気が、わずかに変わる。三宅は数秒、黙ったあとで答えた。


「この試験は、適性を見るためのものではありません。」


視線が、まっすぐこちらに向く。


「あなたを、ここまで誘導するためのものです。」


背筋に冷たいものが走る。


「誘導?」


三宅は、モニターを操作する。そこに映し出されたのは過去の映像。

逃走、接触、訓練、救出。すべての場面に、小さなログが重なっている。

介入:あり、誘導成功、分岐修正完了呼吸が止まる。


「全部、仕組まれてたの?」


三宅は否定しない。それが答えだった。


「あなたが選んだと思っている選択は、すべて最適解に収束しています。」


淡々とした声。


「我々が望む形に。」


頭が追いつかない。


「じゃあ桜井との戦いも?」


視線が、足元に落ちる。血の跡。さっきまで生きていた存在。三宅は、静かに言った。


「必要な工程です。」


その一言で、何かが音を立てて崩れる。


「人を、工程って呼ぶの?」


声が低くなる。三宅は、初めて少しだけ表情を変えた。


「あなたも、例外ではありません。」


その瞬間、空気が凍りつく。


「どういう意味?」


三宅は、ゆっくりと一歩近づいた。


「あなたは完成形に最も近い個体です。」


個体。またその言葉。


「ですが・・・。」


一拍、間を置く。


「まだ、最終段階ではありません。」


モニターが切り替わる。そこに映っていたのは一つのリスト。

名前が並んでいる。知らない名前。

でも、その中に一つだけ、見覚えのある名前があった。


「これって・・・。」


息が詰まる。そこにあったのは私の本当の名前。

そして、その横に表示されているステータス。処分予定:近日中。

頭が真っ白になる。


「は?」


視線を上げる。三宅は、血を這うような低い声で呟く。


「負けないでくださいね。負ければ、次は、あなたの番ですから。」

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