第2章 第2節 その2
宿屋への帰り道。珍しい経験を反芻しながらガストに問う。
「そもそも、あの人はパーティに必要でしょうか。まぁ、万一、大魔導士と呼ばれるアルバートさんが参加されるなら大歓迎ですが、どうもあの人は……」
「どうした? グースとは馬が合わなさそうか」
「その……馬というか……」と口を濁したが、思い切って言うことにした。「グースさんが監獄に入っているのって、女性関連なんですよね。確かにイケオジって感じはしましたが、もし女癖が悪いならちょっと……」
もし女性を見下しているなら女性である自分も見下される可能性が高く、仮に女好きなのだとしたらルーズな女性関係のある男性は嫌だ。私も異性に関心がないわけではないし、潔癖であることを重んじるつもりはない。それでも、だらしないのとは違う。
「なるほど。カリーナはそういうタイプを信用できないのか。女性目線ではそうかもしれないな。それは俺の言い方も悪かったかもしれん。だが、聞いてくれ」
朴訥なガストが言葉多く説明したところによれば、グースは早くに両親を亡くし、兄と二人肩を寄せ合う路上暮らしを強いられた。残念ながら生きるために人には言えぬようなことをたくさんやってきたそうだ。二人とも成人を迎え、冒険者として生きていこうとしたが、兄を早々に亡くした。冒険の最中だった。これまで人生を支え合ってきた兄を失い、彼がどれほど悲しんだのかは分からない。
「たぶんヤツの女癖の悪さは、人の温もりを求めた行動なのだと思っている。そもそも『女癖が悪い』と言うと印象が悪いが、悪い女に騙されたこともしょっちゅうあった。それでも、アイツは女性を愛せずにはいられない男なんだ」
「そんな人が監獄暮らしなんて一体何をやらかしたんでしょうね」
「それは分からんな。それにあの監獄暮らしも不自然すぎる。だから明日に少し調べてみるつもりだ。今日のところは元気に生きていることが分かっただけでも、十分な収穫だと思っている。監獄にいる限り、簡単には逃げられないさ」
その口調からガストが彼をパーティのメンバーとして心底欲しているのが分かった。
仮に彼が加入してくれた場合の後をイメージする。
「あの方は前衛ですか」
「そうだ。盗賊だ」
(盗賊? 物騒な言い方だけど、たぶんレンジャーのことね。だって、犯罪者が冒険者の初期クラスなわけはないし。でも、前衛ならガストさんがいるのに……)
そう思っていると、ガストが付け加える。
「もちろん、戦闘でも頼りになるが、一番はアイツがいることでパーティに慎重さをもたらしてくれる」
「慎重さ?」
「そうだ。俺は前に進むことしか能がないが、視覚や聴覚から多くの情報を掻き集め、ときには前に進むことの危険を察知する人間が必要だ。アイツにはそれができる」




