第5章 第2節 その2
「さて、どうするか……」
グースが壁を見上げながらつぶやいた。
壁を見かけてからさらに奥に進むうちに、武装したスケルトン兵と遭遇するようになった。単純な強さだけで言うなら私たちの敵ではないが、何せ相手は二十四時間戦えるので、夜は歩哨を立て、進行速度を落とす必要があった。
そうこうしているうちに、その壁付近にまで到着した。
壁は町を守るためのもので、かなり広い範囲をぐるりと囲む。高さも三階建ての建物くらいはありそうだ。そして、その手前には堀まである。幸いなことに水は堀の底を濡らしている程度で、それ自体はあまり障害ではない。とはいえ、深い堀だ。幅は何だかんだ十メートル、深さは三メートルぐらいありそうだ。残念ながら橋は引き上げられている。
石壁は古く、ところどころ痛んでいるのが分かる。数か所石組みが崩れ、石の隙間から草木も伸びている。橋を上げている鎖は錆び、橋の木板には小さな穴が開いている。
総じて言えば、かなり堅牢に守られているが、時間経過を感じさせた。野良ヴァンパイアたちが再建しようとした砦と雰囲気は似ている。
また、こちらは平地を街道沿いに歩いていたので、存在を認識されないようにするのは不可避で、ニ十体ほどのスケルトン弓兵が今にも矢を放たんと待ち構えていた。
私たちもスケルトンたちの射程範囲のギリギリで踏みとどまっていた。このラインを越えれば戦端が開かれる。それにこの状況だ。きっと魔男爵含め敵の全体に自分たちのことは知れ渡り、バフを掛ける準備をして待ちわびていることだろう。
「よし、突撃だ」
「ちょっと黙ってください、ガストさん」
さすがに、彼の発想は分かってきた。もちろん彼の攻撃力であれば突撃が最適解のことも多いだろうが、さすがに壁と堀に阻まれた状態では歩兵の勝機は低い。唯一幸いなのは以前同様に相手がスケルトン弓兵なので、近付けばこちらの思うままかもしれない。私のパパ特製棍棒でもどうにか相手をできる。その程度には私のレベルも上がった。
グースが衛兵たちを睨む。
「アイツら高い壁の上で、しかも柵で守られている。向こうから弓を射ることができるが、こちらから命中させるのはかなり厳しい。堀を下り、門にまで移動する間に十回攻撃されるとすると、都合二百発矢を受けるのか……無傷とは行かなさそうだ」
グースの分析にセレスが続く。
「さすがに、私も《飛び道具防御》なんて用意してないよ。明日なら用意でるけど、人数分はちょっと無理ね」
私は呪文に詳しいわけではないが、ひとつ案が思い浮かぶ。
「それなら《飛行》はありますか。もしあるなら、私が囮になります」
それを聞き、セレスはわずかに目を見開いた後、薄く形の良い唇を微かに傾ける。
「短命種にしては、面白いアイデアじゃないかしら。でも、一番のひよっこにそんな役を任せる趣味はないわ。それにこの中で装甲が硬いのは私ですから、私が行きましょう」




