(7)
卒業前の実技試験の当日になった。
俺達はマイクロバスで、ある廃工場に運ばれていた。
その廃工場内に居る組織が捕えた羅刹たち……最強でもE級だと聞かされているが……を倒せ、最低でも今日の夕方から明日の朝まで生き残れ、それが実技試験の課題だ。
全員着ているのは、学校の制服ではなく、動き易さ重視だが、一般人にしか見えないバラバラの服。
組織の正式なメンバーになれば、制服なんて無い。
組織の存在も羅刹の存在も知られる訳にはいかないので、仕事中は「普通に見える服装」をする事になっている。
マイクロバスから外を見ると……妙に薄汚れた団地。ひょっとしたら、試験現場である廃工場が、まだ稼動してた頃の社員住宅かも知れない。
養父と出会う前に住んでいた場所を思い出し……何となく嫌な気分になる。
「10分後ぐらいに廃校になった小学校に到着する。そこが最後の休憩場所だ。最後の食事もそこで取る」
引率の山本先生が、そう告げる。
昼食か夕食か微妙な時間なので、そう言うしか無いのだろうが……まるで、これから死刑にでもなるみたいだ。
マイクロバスから下りると……別のバスに乗っていた真佐木が、妙に険しい表情。
「どうした?」
「ここで逃げ出せば……希望通り退学処分かと思ったんだが……」
「だから、何だ?」
「ここまでの経路を考えると……逃げ道が限られてる」
「そうそう上手く行く訳が……」
「お〜い、何やってる? 飯に……」
牧田が、そう声をかけるが……。
すう……。
真佐木の呼吸音が聞こえた気がした。
「校舎から離れろッ‼」
大声で、そう叫んだ真佐木は……自分で言った事とは逆に、牧田の方に走り寄る。
「気」で一時的に身体能力を上げた……とんでもない勢い。
「がっ‼」
校舎の近くに居た牧田が吹き飛び……そして……。
「うがあっ‼」
俺は、校舎の屋上から牧田を狙ったかのように落ちてきたモノに向けて「気」を撃つ。
本当なら拳なんかに「乗せて」使うべきだが……とっさの事なんで、こうするしか無かった。
結果は……。
真佐木が片手を地面に付け、それに向けて蹴りを放つ。
俺の攻撃は、ほんの一瞬だけ隙を作っただけだった。
真佐木の蹴りを腹に食ったそれは……地面に叩き付けられ……そして……立ち上がる。
「え……あれ? か……河合……なのか? 何で……?」
牧田は、それを見て……戸惑っていた。
顔の下半分を金属製のマスクのようなモノで覆い……喉元には、やたらとゴツい……首輪のようなモノを付けている男。
表向きは……1年の頃に退学した事になっている河合……。
「これが……私達の年度の……『予想外』か……」
俺も「気」で身体能力を増強し……駆け付け……。
「試験は、もう始まってる訳か」
そして、河合へ向けて「気」を込めた拳を放ち……。
「ご……っ‼」
腹部に命中……。
しゅう……。
一瞬、河合の皮膚に「光る血管」のようなモノが浮かび上がる。
養父と初めて会った時の記憶が脳裏に甦る。
「ぐう……」
しかし……河合の体から上がっていた煙は……少しづつ減り……。
ひゅう……。
真佐木の口から……口笛のような呼吸音。
真佐木は河合に連撃を放つ。
しかし、余り「気」が乗っていない打撃は……いや待て……。
真佐木の攻撃が効いてるようには見えないのに、河合の体から上がる煙の量が増え……。
「ふおっ‼」
俺は河合の脇腹に「気」を込めた廻し蹴りを叩き込み……。
「○×△□〜っ‼」
河合の口から意味不明な悲鳴。
続いて、真佐木の指が河合の両目をえぐる。
河合の両手が真佐木の腕を掴むが……しかし、河合の体から上がる煙は更に増えている。
皮膚に浮かんだ「光る血管」のようなモノは……明滅を繰り返し続け……。
ぼろっ……ぼろっ……ぼろっ……。
折角、真佐木の腕を掴んでいた河合の指が……一本、また一本と落ちていく。
「ふんッ‼」
真佐木の叫びと共に……河合の体から力が抜けていき……そして、河合の両膝が地面に付いた。




