(6)
「あ……えっとさ、お前の兄さん達の時って……最終試験で、えっと、どんな予想外の事が……」
牧田は、真佐木にそう訊いた。
「知らん。聞いてなかった。興味も無かったしな」
「何でッ⁉」
「だって、私は、3人の兄貴が全員死んだせいで、この学校にブチ込まれたんだぞ。兄貴達が1人でも生きてる内は、普通のドラ娘として好きに生きてくつもりだった」
「そんな……何か……言ってなかった? 何か覚えてない?」
「兄貴達は、ここを卒業してから、ほとんど実家に帰って来なかった。めずらしく帰省したと思ったら、死体になって棺桶に入って帰ってきやがった。3人全員が順番にな。下の兄貴達は、上の兄貴の葬式が終ると、すぐに、仕事とか、この学校とかに戻って行った」
真佐木の長ったらしい説明を聞いた牧田は、呆然とした表情になった。
「残念だが、死体は、何も話せないし、死体から思い出話を聞き出そうとするのは阿呆か狂人だけだ」
真佐木は大真面目な表情。つまり、こいつにとっては、下らない冗談を言ってるつもり、って事だ。
「お前、自分の兄貴が死んだ時の事を冗談のネタにするか、フツ〜?」
俺は、流石に、真佐木にツッコミを入れた。
「そんなモノかな? まぁ、家族との関係なんて、人それぞれだ。どこの家庭にだって、問題の1つや2つ有るだろうけど……問題の種類は家によって違う」
「そう言う一般論じゃなくてさ……」
「正直言って、兄貴達と話した事は、あんまりない。普通の家族の兄妹の平均よりは遥かに少なかった……と思う。普通の家族ってのが、どんなモノか、良く判んないけどな……」
真佐木は、俺の方に顔を向ける。
「言っちゃ悪いが……」
「言うな」
「わかった」
俺だって、自分の家族が普通じゃないのは自覚している。
実の親は毒親。
育ての親は……まぁ、「組織」の「戦士」の中でも最強クラスという……平均から外れまくった人間にしては常識人だったのだろうが……仕事は忙しく、養父が居ない時は、養父の同僚や部下の家に泊めてもらってて……そして、その養父の同僚や部下も転勤やら……ひょっとしたら殉職で、俺が名前を覚えた頃には、別の人に泊めてもらう事になった。
そうか……。
そう云う事か……。
「どうした?」
「何でもない……」
「気に触る事を言ったんなら……」
「いや、いい。ちょっと、1人で考えたい事が有る」
「わかった」
真佐木は、そう言って、牧田を肘で小突く。
「じゃあ、ちょっと、俺も休憩するわ」
ようやく判った。
何で、俺が、この学校に自分から入ったのか……。
多分、俺は……「組織」そのものに育てられたも同じなんだ。
真佐木は、「組織」と関わりを持たない人生を望んでいたのに……結局は、この学校に入る事になり……そして、俺は……「組織」の「外」で、生きていく方法を知らない……想像した事も無い。
実の親が生きてる内は、親以外の大人との関わりは、ほとんど無く……そして、養父に引き取られてから関わってきた大人の大半は……「組織」の人間だ……。
やっぱり、真佐木は空を自由に飛べる鳥で……俺は地面に縛り付けられた人間だ……。空を飛んでた真佐木は遠くに有る「何か」を見る事が出来たが……地面に居た俺は、周囲しか見えていなかった。




