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『魔法少女の初仕事』③

『魔法少女の初仕事』③

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 ちっ、


 まぁ、いいや。

 妹の件と一緒で一旦は後回しだ。

 今はあの暴れ回ってるヴィランをなんとかしないと。


 視線を戻すと、逃げ遅れたのかヴィランの近くで怯えるように膝を抱え込んだ状態の少年が見えた。

 ヴィランには気づかれてない様だが、もし見つかればどうなるか。

 そうでなくとも周囲はヴィランによって現在進行形で破壊されており、いつ巻き込まれてもおかしくない。


「マスコットさん! 変身ってどうやって、」


「イメージじゃ! 自分が魔法少女になった姿を強く思い描くのじゃ!」


「イメージ……」


 契約の時変身したのはマスコット主導だったからどうすればいいのかと思ったが、イメージか。


 強く思い描く。

 別になりたい様な自分ではないが、幸いと言うべきか一度見たら忘れられない衝撃的な姿だった。

 自分の女装した姿と言うものは。


 ピンク、スカート、ロリータ……


 僕の中で魔法少女になった自分をはっきりとイメージできた瞬間、また視界が真っ白に染まった。

 身に覚えのある浮遊感、自分のことを少し上から見下ろしてる視点、そして下腹部が熱を持ち光を発している。

 前回と一緒だ。


 成功した、のか?


 一連の行程は、前回以上にスムーズだった。

 全身があっという間に光に包まれ、変身が完了する。


 契約時からそのままの格好で来たから見た目こそ変わって居ないが、体の内側から力が溢れ出てくるような感覚がある。

 これが魔法少女。

 今の僕ならなんでも出来る、そんな全能感すら湧き出て来る。


 街を破壊しているヴィランと戦うことを考えると今でも怖い。

 でも、どこかで僕なら勝てるなんて思考が囁く。

 普通だったらただの無謀なんだけど……

 こういう思考の誘導すら魔法少女としての能力ってことなのだろうか。


 普通の少女が変身したところで、そもそも戦おうと思う事自体が高いハードルになる。

 なるほどね。

 マスコットも魔法少女に変身すればヴィランと戦えるなんて言う訳だ。


 真っ白の空間が消え、視界が元に戻る。

 体感では結構時間が掛かった様な気がしたが、実際はそんなにかかっていないらしい。

 視線の先では、ほんの一瞬だけフレームが飛んだ程度のズレしか感じられないほどの違和感で変身前からの世界が連続している。


 本当に一瞬、そしてそれを感じ取れるほどの力……


 細かい事は後だ。

 地面を蹴り、一瞬でトップスピードに入る。

 今なら不意打ち出来そうだが、人命第一。


 ヴィランの近くて怯えていた男の子を抱きしめ、飛び退く。


「大丈夫、僕が来たから」


 破壊の中心地からある程度の距離をとり、抱きしめていた男の子を下ろす。

 そして、安心させるように語りかけた。


 僕を見上げる様にして目をぱちぱちさせていた男の子は、状況を理解して安心したのか僕にガバッと抱きついて来た。


 少しびっくりしたが、優しく抱き返す。

 きっと怖かったはずだ。

 不安で仕方なかったはずだ。


 突然ヴィランが暴れ始めて、

 しかも逃げ遅れて、

 あんな近くで強大な力を目の当たりにして、


「もう、大丈夫だからね」


「……ありがとう」


 ただ、ずっとこの男の子にかまいっぱなしという訳にもいかない。

 今も現在進行系でヴィランが暴れてるのだから。


 今だに抱きついたままの男の子をゆっくりと離し視線を合わせる。


 初めは離れたく無さそうにしていたが、僕の目を見て分かってくれたのだろう。

 強い子だ。

 きっとまだ不安だろうに。


「……魔法少女シズ・フラー?」


 シズ・フラーって言うのは妹の魔法少女としての名前だ。

 シズは名前だろうが、フラーがどこから来たのかは知らない。


 そうか、妹を知ってるのか。

 こんな小さな子にも。

 ずっと妹がこの街を守ってきたんだもんな。


「の、おに……お姉ちゃんだけどね」


 流石に兄っていうのはまずいよな。

 一人称は……、まぁ僕っ子ぐらいならそんな珍しくないからいっか。


「安心して、あのヴィランは僕が倒すから」


「頑張って、お姉ちゃん!」


「っ、……うん!」


 子供向けアニメなどで使い古された手法ではあるが、どうやら応援が力になるって言うのは本当らしい。

 特に、純粋そうな子供からの下心のない応援と言うものは。

 僕はこんなふうに応援される機会なんて無かったから、言って仕舞えばただ声援を受けただけだと言うのに分かりやすく気分が上がっている。


 ふふ、お姉ちゃん頑張っちゃいますよ♪


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