↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/64

探偵ごっこ


「此処だけの話、パンが不味くて硬いだけじゃ無いんだよ」


これはある洗濯場の下女さんの話。

主食なのにかなりな廃棄量ってどんだけ不味いの?

本当に皆が食べなくて捨てているのかと調べに来たけど、パンだけじゃ無いだと〜?

草むしりの下男さん庭園の肥料を運んでいた下男さん、アイロンしている下女さんも口々に棄てる部分で作っている飯だから味の期待なんて無い、不味い、馬の餌の方がましなんだ、あいつらはアポー(リンゴ)を毎日食べてるんだよと悔しげに言う人もいた。

確かにデザート無いよね。せめて八等分のや小さなカケラでもリンゴとか蜜柑とか果実欲しいよね。

皆そんなに文句あるなら調理人にマズイって文句言いなよ。プロ意識のかけらもない奴らだぞ、まぁ仕切っているのは貴族だから言えないのだろうけどさ。


何でそんな事をしているのというと

宰相様から捜査権も勝ち取りましたので、まずアンナちゃんの伝手でちょっと変装してクソ不味いパンを食べているだろう下男下女さんへの聞き取りを開始、レッツラゴーな訳です。


どうも潜入捜査中のイグサです。




カツラを被り下女さんの服を着て下男下女さんがいる区画へ、新入りです色々教えてねと混じり込んでの調査を始めた。


わかった事は下男下女さん達の城での食事は不味いが、体力的問題から皆我慢して何とか食べているという事。


主食のパン、こっちに食パンは無くて所謂コッペパンね。それも城の一流調理人(と言われている人達)が作る物なのに、ホントは不味くて硬くて食べれないと言う人が多かった。

やはり原因は厨房か‥あれ?


***  ***


下男下女さんたち平民専用食堂は同じく平民住居棟に併設されている。

侍女・侍従は貴族なので貴族専用住居棟併設(地方貴族や希望者の宿泊棟)の食堂を利用している。

エリオット君も騎士専用棟(騎士は基本、城に常駐の為皆寄宿。隊長位より自宅通勤可)の食堂を利用している。

アンナちゃんとエリオット君の二人から食事についての不満は無いとのことで、その日のメニューとか使用している材料とかわかる限り聞いてみたがやはり貴族は美味いもん食ってやがるな、かなり差をつけていやがると判断したのよ。


同じ厨房では無いが統括は城の厨房にいる総料理長(男爵位持ち)を筆頭に同男爵位をもつ人が各棟食堂の長をしている。

城の厨房に総料理長(予算配分や他部門との調整・王家の食事担当)城副料理長(城の厨房での調理指示)棟料理長(各棟厨房調理指示)に分かれている


女官・官吏は上位貴族の子女なので王族の側使いとして住まいも王城の中にあるらしい。食事も王族と同じものを食べる(城内に王族とは別の食堂がありそちらで食べるとの事。こっちの調理は総料理長班が受け持っている)


それとこの世界は朝夜の2食で、昼は無く間食(甘味)がお茶の時間に出される。大体一時くらいかな?お茶の習慣は貴族にしか無くて、甘いものを各自の執務室に併設されている休憩室で食すとの事。それを食堂に取りに行って茶を出すのは侍女さん達の仕事なわけよ。


下男下女は数十分の休憩扱いで軽食を食べるそうだ。腹に溜まるもの、特に今は芋率が高いとの事。その芋も細くてそこそこのお味らしい。勿論これもちゃんとインタビューしたし現物も見たよ。


そしてふっと私にはそれさえ出されないのねーと思い出した。

お茶の時間はアンナちゃんやエリオット君が何かしら御茶請けを提供してくれているがあれってもしや二人の自腹?芋なんて見た事ないもん。


二人ともお茶休憩だからと私が入れられている住居棟から何処ぞへ行ってるとか無いけど…誰か来た感じも無いよね?ではアンナちゃんがお茶を入れてくれている時に、今日はコレでとお菓子とか出してくれていたけど…貴族のお茶の時間にはおそらく高貴なお菓子を出しているだろうからそれを横流し‥提供してくれてたのか?まさか自前とか?

取り敢えず今はやる事やって後で聞こう。出された菓子は美味しくて旨うま言いながら食べている身としては城から提供されていないのを可哀想にと思われているかもと気付くと中々にやりずらいわ。


聞き取りによると下男さん達が食べている芋の産地は気候も水が少なくとも余り影響を受けずに、豊作だから安定供給出来るそうで、最近は何時もふかし芋(そのまま蒸すだけで持ち運び出来るから)だそうだ。たまに蒸しケーキパンみたいなのが出るが年に一、ニ回程とか聞けば大体が芋なんだね。


ゆっくりお茶を飲む時間などないし、場所も外や建物の軒下、納屋などの貴族の目に止まらない場所で休憩するから、ワンハンドスイーツが楽って事か。


朝に休憩用の芋などと水筒(木の筒)を渡され各自ポシェット位のバックにしまい仕事場へ行き(その姿はまるで園児の登園時だよ)時間になると休憩場所でひっそりと食べてまた働くとの事だった。

それって休憩にならないじゃん。


仕事中バックなんて持ってないなと思ったら作業の近場の木や壁に掛けて作業中物は持たない、外仕事が多い下男下女達は城の敷地のあちらこちらで掃除、森の管理の伐採や馬の藁や排泄物処理にゴミを集めて焼却、城中の洗濯物を洗い干しアイロンをかける等々多岐にわたるし、広大な城の敷地内を昼の休憩の為に平民棟へ戻るのも効率よくないからその場で食べろなんだろうけど、せめて休憩は屋内が良いよね。

中々ハードな仕事だ。

主に体力の必要な部門が殆どなのに不味い食事で、夜勤は夜勤手当として飴が貰えるのが楽しみとか悲しいぞ。


手当てが飴だけってありなの?


ご飯くらいしか楽しみなんてないだろうに不味いし、手当が飴?

苦行だよね。


でも一部農村部の事を考えれば食べれるだけマシだと言う人もいたのは確かだ。飴は自分で食べないで子供の土産にと貯める人も多いとか。やはり白砂糖は高いそうで甘味は金持ちか貴族の食べ物らしい。(蜂蜜もあるが甘さの違いがあり砂糖は別格に高いそうだ)あちゃ〜この前パウンドケーキでガッツリ使っちゃったけどアレも税金で買ったものだよね。今度は自前で買うか…ふふふ地味に金持ってるのよ私


別の意見では、


「城で働けば良いもの食べれると思ったのにこれなら田舎の方がマシだよ」


なんて人もいた(地域格差もかなりあるんだな)で、また腹たつんだけど地位、役職によって其々の食事には当然の様に差がある訳よ。

アンナちゃんが何か言いたそうな顔であのと言ってきたが仕事の手を休めて話してもらっているので今は聞き取りにに集中したかった。後でちゃんと聞くからと聞き取りに集中した。


***  ***


え〜調べによりますと

其々の食堂で調理をしている材料からしてまぁ言ってみれば松竹梅と地位の差によって食材の値も分かれているみたいです。


勿論王族は最高級の材料で松、貴族が竹、下男達はその何分の1の材料で作ったもので梅なんだね。(もちろん王族でも年一の豚さんなんて平民は食べた事さえ無い)城だけあって下手な食材は無い‥筈なのだけどね。


もしかしたら金さえあれば城外の下町の食堂の方が美味しいかもねなんて言う人もいた。

城だから高級食材の切れ端とか、皮とか上位の方には出さない捨てる所を最下位の下男下女達の食材にしてるフシがあると思ったのは、実際私の食事には野菜の屑や皮が入っていたと言うかそれしか入ってないのでフシでは無くて確定だろう。


蛇足だがエリオット君によると騎士は騎士棟で皆同じ物を食べるので同じ釜の飯的な?習わしがあるそうです。

上官(上位貴族)も部下(上位貴族の新米子息・下位貴族)も同じ食事で結束を固めるとかいう‥初代の騎士団長が決めたそうだが良い風習だと思う。

戦地では皆保存食を食べるそうだが、命の極限にいて、位がとか家柄がだなんて言っていられないからね。これも訓練の一つと思えばまぁ我慢できるだろう。十分食べられるものであるそうだから松寄りの竹かな?


実際昔の戦争中、食事の差別をしていた部隊が戦場で孤立した。貴族の部隊長の贅沢な食べ物がもう何もなくなったという時に、部隊の誰一人として食べ物を分ける事をせず、斬られて死ぬのでは無く栄養失調で死んだ貴族の不名誉な死に方があったそうだ。

以来部隊内の円滑なコミュニケーションを取る為の一つとして食事は同じものを食べる事が決まったらしい。きっとその隊長は美味しいものを見せびらかして、一人で食べていたんだろうね。食物の恨みは恐ろしいのだよ!


「でも騎士は貴族しかなれないから竹クラス以上の食材使ってるのは間違いないでしょ?」

「タケクラス‥ですか?それはどの様な」

「ん、気にしないで私の世界のランクの付け方の話、ご飯不味くはないでしょ?」

「はぁ、そうですね」

「お家のものよりは落ちる?」

「‥」

「うん、わかった。」


この世界は全てが家柄でカテゴライズされる、いや何処でも同じ‥なんだけどね。

間近でこうも見せつけられると今の自分がやっぱり何も無いってわかっちゃうじゃん。

なんだかイライラするからコーヒーでも飲みたい‥紅茶じゃ無いんだよ!

コーヒーなの!はぁ〜ぁコーヒー!!ないとわかっているがわかっているから余計に欲する気持ちが出でくる。

くそー

飲んで気分を落ち着かせたいのに〜


***  ***


では気を取り直して、梅クラスの食事はどんなかな?

平民食堂のパンはスープに浸してなんとか食べている硬さでツブツブが混じっているので全粒粉的な灰色パンだ。廃棄されていたあのパンで、因みに私の食べているものとも全く同じ。


スープもあまり美味しいとは言えくて(野菜のクズが具だなとすぐにわかる)かなりスープも薄めてるだろ?と言えるもので、なんとか体に流し込み空腹を逃している、とほとんどの人は言っていた。梅とも言えないほどのものって事さ。

平民は屑を食べて格差に甘んじろ!

なのだろう。

平民が居なくなったら困るのはあんた達貴族なのに大事にしないのね〜

自分で洗濯する?ゴミ拾うの?料理作れるの?水汲みできる?出来ないクセにね。


下男下女さん達は干ばつの惨状や、地方の民の苦しさを知っている、何せ家族はその渦中にいる人が多い。

だから食べるものがあるだけマシと無理やりでも城の食事を残さず体に詰め込んでいるのが殆どだ。この仕事を失えば仕送りの賃金で生活している家族が生きるか死ぬかの瀬戸際に立つわけだからね、言葉の端々からでもこれでもましと言う諦めが伝わってくる。

この人達の方がよっぽど世間が見えているのかもしれないな。


そうみんな綺麗に食べちゃっている。

食べきってるのよ。

さてへここで問題が浮かんだぞ…



不味いのを我慢して残さず食べているのに何故か廃棄が出るの?


目の前で確かに下働きの皆さんは残さず食べているので、まさか余剰が出ていることは皆さん知らなかったようだ。


出るとしたら作る量を間違えているのではないかとか、腹の具合もあるから何時も同じ量が消費されるわけでもないし、と厨房に対しては何の疑いも思っていない、ここの厨房の連中は同じ平民なんだからそんな勿体ない事はしていないよって皆同じことを言う。

ただ監督官としてここには男爵位のこの棟の料理長が君臨しているのだけど、そいつの指示はどう出ているのかな?


平民棟食堂ではパンを廃棄箱に捨てるやつなどいない。厨房のゴミ箱の中身も確認したがあったのは鶏ガラの様な出汁用骨位だった。肉のかけらも無い程削り取られて見事に骨だけ。野菜クズもほんとに食べられない部分だけで根っこ類も無いから具になっているんだろうね。となると


捨てられていたパンはここ以外で意図的に廃棄とされた?!

その事だけは確かなようだ。


あのパン捨て下男さんはたしか平民棟の方から来てわたしたちの前を通り過ぎて森へ入った。

私が出会ったのは城の厨房の帰りだったな‥と言う事は私は勘違いしていたらしい、あの廃棄パンは何処から持ってきたものだったのかな?あの下男さんも警戒してもう喋ってくれないだろうしな…


因みに食べる人によって材料を変えてるのは公然の事だとはわかったけど、

私が食べているパンと捨てられたパンは同じ見た目なんだけど、なんか違うのか?どう見ても同じだよなと思い、ふと疑問が浮かんだ。


「私の食事って何処から来てるの?」


アンナちゃんは城の厨房で作っているものと思っていたみたいだけど(取りに行っているのが城の配膳室だから)パンとスープを見て私の質問からもうお気付きの様ね。


私の食事はどうやら平民棟の厨房で出されているものと同じで、自分が食している物よりかなり下劣なものであるとさっき始めて気付いたようだ。

あぁさっき言いたかったのはコレ?

何か言いたい顔していたものね。

いや私もね、おかしいな〜と思いつつもまさかねと思っていたのでね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。