腹黒 1
やんややんやと騒ぐオッサン達を尻目に、静かだったお誕生席さんが動いた。
ん?この報告書は何ですか宰相様?何やらメモ付書類をスルリと(使ってますね私のあげた付箋)寄せられた。ふむふむ。‥え?
「最近、東の山脈の木材の流通が増えてませんか?」
「‥」
「!」
「!!」
誰か答えろ!
「まさか無政策で木を切ってないですよね?農作物で税を払えない農民が木材でしのごうとしているとか無いですよね?これで大雨が降ったりしたら土砂崩れが起こるかも‥人も死んじゃうかもですし、復興には凄いお金掛かるんですよ。」
「「「!!!」」」
「一度落ちた土砂は元の山には戻りませんし、計画性の無い伐採は山が枯れる元ですよ。」
「ざ‥材木の件は‥わ、わからんな」
「そうですか、あーあともう一つ不安があります。
この干ばつで山火事の不安も捨てきれないすね。普段人が入らない山に多くの人が入り込んで、そこで煙草とか焚き火とかしちゃって不始末の火種が残っていたら‥雨の降っていない山は乾燥している上、燃え広がったら今は消す水が無いですよね?延焼を止めることが出来ませんよ。燃え上がった火は近隣の村に町にと広がり燃やし尽くすでしょう。木材も灰になりお金にならなくなりますね。すると、国民は誰に責任を問うのでしょうか?」
「領主に問うでしょうね?そして、最終的に国に責任を問いますね?」
おう!いいとこ宰相様取られた。睨み付けてカッコよくいう所取られた〜
あぁこれは言っておかないと。
「復興には人手が掛かる、金が掛かるのです。立派な木のある山が焼失すると余計に雨が降らなくなり負の連鎖になりますよ。もし山の事を知らない人が勝手に伐採していたら、これ非常に、本気で、不味い事になりますから」
「「「‥‥」」」
「成る程、直ぐに木材の流通を調べるのと、各地域に火事の厳重な監視通達を出しましょう」
「ええ、早い方がいいですよ宰相様。乾燥時はほんの小さな火の粉でも燃え広がります。山への立ち入りを制限して火器持ち込みを絶対させないのと、山に近い集落では少しでも雨水湧き水を貯めて防火用にする準備をして下さい。で水を貯めるにはボウフラが浮かないように注意もお願いします。蚊から病気が蔓延する場合もあるので、貯水タンクには金属の銅を入れるか、小魚を入れるかして蚊の予防をしてください」
「蚊?虫が病気の元になるのか?」
「そうですよ。いろんな人を刺して病気を移して行くんです。高熱を出し目眩や頭痛を起こし、身体中から出血して死ぬ事もありますが、怖いのは感染力が強い事ですね。村一つなんてあっという間に感染しますよ」
「「「え?」」」
ちょっマジな話してるのに、上手いこと合いの手入れました的な宰相様は、笑いを押さえ混んでる様なヘン顔をしてません?手で隠し切れてないぞ腹黒
ムカついたので黄熱病やエボラみたいなのやデング熱マラリヤなどの蚊が感染源になる病気蔓延の恐怖を誇張して語れば3人の大臣と同じくビビってやんの!ちっさい蚊が何が出来ると侮ってはいけません。
一瞥してニヘリャ〜と笑ってやろうか?こっちにも蚊がいた事にびっくりしたが蚊で話が通じてよかったわ‥
さて、私を使って材木の不正売買の件を表沙汰にした腹黒はまだ笑ってますこれ議事録を録ってるから後で知らなかったは効かないってやつね。ひっそりと部屋の隅っこに記録係らしき青年がさっきから忙しくペンを動かしてるよね。
そっちの方が大事なの?水不足や山火事や土砂崩れより木材の違法伐採の方が重要ですか宰相様?
まぁいいや、小娘が馬鹿言ってる位に油断していると思っておこう。私は諸々注意喚起はした、それを信用するかしないかはコイツら次第。後で何か起こっても私の責任は無い‥と信じたい。
議事録の改ざんがなされないことを祈るばかりだわね。
失礼な腹黒宰相め。少し情報を見せたら私が口挟むと思ったのよね?材木もだけど水は良いのかい?
「では、雨乞いを頼みましょう」
「は?」
いきなり何です?
「お前が提案したのだろう」
「‥‥(おっさん達覚えていたのか〜い)」
さっきまで川から水引くって言ってたじゃん、この無理くりな話の反らし方‥木材の不正販売を議題にしたくない?
「聖女様にお願いせねば」
「あぁ〜なるほど。確か今日は薔薇園で多くの男性方とお茶会してましたねぇ、是非にお力をとお願いしてきてはいかがでしょうか?今すぐに、早い方が何かと良いのではないかと思いますよ。聖女様がヘベレケに酔って誰かとしっぽり‥あ〜、ちゃんと話を聴いていただけるうちに早めのご依頼に行く方が‥」
「「「確かに」」」
(早く居なくなれ)と宰相様が煽っているけど不正追及はいいの?
いそいそと大臣達は、クイーンに会いに部屋を出て行った。逃げたとも言う。わざと逃した?大臣たちもクイーンの放蕩ぶりは浸透してんのかそっちがびっくりだよ、ふー。
終わった。
ホッとする間もなく、ばさりと紙の束が渡された‥何これ?
地図。え?
「今なの?地図出すならさっき出してよ、もう大臣達居ないですよ。」
宰相様の事だ何かしらの思惑があっての事なの?
「我が国では、いやこの世界では地図は最高軍事機密なんですよ。何処の馬の骨かわからない者に簡単に見せるものでは無いのです」
カチーン
「(そっちが呼んでおいて何処の馬の骨ときたもんだ!)じゃ見せなくて結構!私には無関係ですので、これにて失礼します」
がたんと音をさせて椅子から立ち上がったが机上の地図には国境を流れる川?が赤ペンで丸付けされていた。(私があげた二色ペンまだ使ってるんだ。)さっきまで持っていなかったのに‥隠していたのかとか、とつい見ちゃったよね。立ち上がってそのまま扉へ向かえばよかったのに立ち止まって見入ってしまったんだよね‥地図を。
「うちが何処かと戦争を始めたら一番に路頭に迷うのは貴方になるのかな?」
「はぁ?」
今、地図を見せたのは私に遠慮のない物言いをする大臣達が居ない所でという配慮?いや恫喝の方か‥
結構この国に貢献しているにもかかわらず、未だ得体の知れない《何処の馬の骨》な異世界人という括りは取り払えていないわけね。そっちも私を信用していないと言うことか。
ペンも大切に使ってくれているんだなとちょっと感動していたのに‥ホント、ありがたいことで!
トントンと地図を指で叩き、宰相様には逆らえないのだから観念しろと?
そう言う事ですか‥静かな圧程怖いものはありません。仕方なく座り直して地図を見る。
川はかなりの長江。蛇行してあっちの国こっちの国と国境線を跨いで流れている。川で国境を作らないのはこの蛇行の大きさと川幅と高度のある山か
地図に指を置き水源を辿れば‥彼方の国の山奥だわ。源流の話を出されたりしたら、川の占有率も少ないこっちは終わりだねー。
彼方も水が不足しているのなら此方に水を引くのは相当吹っかけられるのは覚悟しなければならないだろうな‥
だから用水路の話じゃ無くて雨乞いの方にシフトチェンジしたのか。わかっていて逃げたなおっさん達。大口叩いていたくせに腰抜けども。
現実問題この川からは水は引けないだろう。相手の国との折衝は厳しいだろうしアレ‥これ山じゃないの?は?
国境って高い山であちらの国と分断されてるの?境目が谷に流れる川?何処かで山岳地帯は水の影響受けてないとか言ってなかったか?ここか!穀倉地帯は山からの水で水不足は影響無しで困っているのは山から離れた平地部か。枯れている所とそうでない所を色分けしてくれるとありがたいんだけどな〜
それに宰相様、地図もっと早く出せたよね?
バカおっさん達を完膚無きまで丁寧に理責めにしてやったのに‥。
それこそ戦争回避の布石として私を使うべき内容じゃないの!
それともこれ出すまでもなく諦めると思っていたか?
この狐‥
「追いかけなくて「農民の水の奪い合いが酷いので、何か策はないか?この地域なのだが」
「‥まずは貴方も聖女様の説得に行くべきでは?クイン‥彼女なら雨、降らせられるんでしょ?一縷の望みをかけて呼んだ聖女様なんだから、いい加減仕事させたら?その為に呼んだんじゃないの?ならば貴方も追いかけた方がよろしいのでは?」
「今は少ない水の分配の策が欲しい。どうせ出向いてくれない聖女の説得など、アイツらに任せておけばいい。私など要らないだろう。それより湧き水があるのだが、それを使えるなら使いたい。その方法を持っているのだろう?」
宰相様‥さっきの時点で言って下さいよ。雨乞いなんかにクイーンは行かないだろうって?確かにそうなんだろうけど、邪魔者おっさん達の排除に私の事もクイーンの事も利用したのか…
それより宰相様は聖女の事‥もう捨ててる?聖女無しの策を講じようとしているの?じゃ何であのままにしてるの?あの子の贅沢病は多分止まらないよ。遠慮なんてしないもの。
多分国庫から支出してるでしょ?あんなジャラジャラした宝石類個人資産じゃ絶対無理だよ。早くしないと国が潰れますよ。
暫し睨み合ったが引かない様だし、面倒になってきたので、水の利権に関して水源の各分岐点に均等に分配する分水嶺を作る方法があると説明した。
でも有る程度の水量がないとこれも稼働しないけどなぁ。どれくらい湧き水あるのか教えろ〜。水少ないって言ってたよね?教えたは良いけど水が無くて使えなかったら何もならないよ?私は嘘つきにはなりたくない!
「詳細は宰相様の執務室で良いですか?書類用意しないといけないので、それにそっちの情報が足りなすぎっ‥です」
あ〜もう敬語もめんどい、親指と人差し指を広げ拡大させる形を示し人目が有る事を暗に伝えると
「成る程、アレだな。よし行くぞ。」
「‥は?」
(いきなり片付けて立ち上がったよ?もはや仕事よりアレを触りたいだけじゃ)
「さぁ行くぞ」
はしゃぐなおじさん。目の色変えて楽しそうだね。で結局大臣の話ってアレで終わりなの?




